敬虔主義

敬虔主義について

敬虔主義（けいけんしゅぎ、英: Pietism）は、特定の教理を忠実に守ることよりも、個人の内面的な敬虔さに重きを置いた信仰のあり方を指します。これはキリスト教の歴史において繰り返し現れてきた思想ですが、特にドイツのフィリップ・シュペーナーによって明確な運動として形成されました。

敬虔主義の起源と発展

敬虔主義の起源は、宗教改革によって生まれたルター派の教えにまで遡ることができますが、17世紀になると教義の解釈が受動的になり、信者の積極的な関与が薄れていきました。シュペーナーはこの流れに反発し、信者が教会の改革に参加することの重要性や禁欲的な生活を説きました。1666年、彼はフランクフルト・アム・マインでルター派教会の牧師として活動を開始し、信者同士の集会を提唱しました。これが後の「敬虔主義」という名称の由来となります。

シュペーナーは1675年に『ピア・デシデリア』を発表し、ルター派の衰退を指摘した上で、信者が積極的に教会に関与する必要性を強調しました。このアプローチは好意的な反応を受けつつも、教義的な主張が反知性主義、主観主義に偏る危険性から批判を受けました。

敬虔主義の実践

シュペーナーの後継者であるアウグスト・ヘルマン・フランケは、「真の愛の一滴は知識の大海よりも尊い」との信念のもと、教育や伝道活動を推進しました。彼は多くの伝道者を海外へ送り出し、プロテスタント教会の宣教活動において重要な役割を果たしました。しかし、フランケの没後、この Bewegung（運動）は次第に衰退していきました。

この衰退の一因には、敬虔主義が教義に縛られ過ぎ、反知性的な教育を採用していたことが挙げられます。それでもこの運動は、信者が聖書に基づいた生活を送る重要性を訴え、信仰生活における個々の役割を強調した点において評価されます。

思想への影響

敬虔主義はカントやゲーテといった哲学者にも影響を与え、音楽家J.S.バッハにおいてはその作品に深い影響を及ぼしました。バッハの『マタイ受難曲』や『ヨハネ受難曲』にその影響が見て取れます。特に南西ドイツのヴュルテンベルクでは、独自の敬虔主義が発展し、ヨハン・アルブレヒト・ベンゲルを中心に聖書主義が盛んになりました。

ヴュルテンベルクの敬虔主義

ヴュルテンベルクの地域は、17世紀初頭に多くの困難に直面したことで、清教徒的な信仰書が影響を及ぼし、敬虔主義が根付くこととなりました。ヨハン・アンドレアス・ホッホステッターは、この地域の信仰教育改革や堅信礼導入に尽力した重要な人物です。1730年代には、敬虔主義運動がよりラジカルな方向へと進み、娯楽や遊興に対して厳しい姿勢を示しました。

ベンゲルの教学は後の牧師たちに強い影響を与えました。彼の弟子たちは、さらなる神学の発展や相互の信仰の深化に寄与しましたが、18世紀には敬虔主義者の中で分離主義的傾向が広がり、これが敬虔主義の強化につながりました。

まとめ

敬虔主義は、信者自身の信仰の深さや内面的な成長の重要性を強調し、教義に捉われない自由な信仰のあり方を提唱しました。これにより、個々の信者が教会において果たすべき役割に光を当て、聖書中心の信仰生活の重要性を広く喚起したのです。

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