整流器とは
整流器(rectifier)とは、
交流電流を一方向にのみ流す整流作用を持つ電子部品の総称です。
交流を
直流に変換する役割を担い、電子機器の
電源回路において不可欠な存在です。整流器は、2つの端子を持つ
ダイオードのようなものから、制御端子を持つ
サイリスタや
MOSFETまで、さまざまな種類があります。
整流器を用いた回路は、低電圧小電流から高電圧大電流まで、非常に幅広い範囲で利用されています。そのため、回路の用途に合わせた適切な素子を選択することが重要です。整流器には、以下のような種類があります。
水銀整流器(エキサイトロン、イグナイトロン)
熱陰極水銀整流管
亜酸化銅整流器
セレン整流器
ダイオード(シリコン整流器、ゲルマニウム整流器)
二極
真空管
サイリスタ
MOSFET
これらの素子は、それぞれ異なる特性を持ち、用途に応じて使い分けられます。
整流回路の接続方法
整流回路では、整流器(素子)を組み合わせて使用します。出力側の等価相数が多いほど、
直流側の脈動対策が容易になるため、大電力用途では等価相数を多くする傾向があります。以下に代表的な接続方法を説明します。
単相半波整流
整流素子1個を使用し、
交流の正弦波の正または負の部分のみを整流する方法です。最も簡単な構成ですが、出力がパルス状になり、平滑化しても電圧が低くなるため、電源用途にはあまり適していません。しかし、回路計の
交流電圧測定回路や高周波プローブなど、エネルギー損失を最小限に抑えたい用途では有効です。
理想的な単相半波整流器の無負荷出力
直流電圧は、以下の式で表されます。
Vrms = Vpeak / 2
Vdc = Vpeak / π
ここで、Vdcは
直流または平均出力電圧、Vpeakは入力電圧のピーク値、Vrmsは出力電圧の二乗平均平方根値です。
単相全波整流
単相全波整流は、整流素子を組み合わせて、
交流の正負両方の波形を整流する方法です。単相ブリッジ整流と二相全波整流があります。
単相ブリッジ整流:整流素子を4個使用し、単相交流を全波整流します。ACアダプタなどの非スイッチング電源で広く使われています。
二相全波整流:整流素子を2個使用し、正負が逆の二相
交流を整流します。
変圧器の二次巻線を二組用いるため、単相ブリッジ整流よりも
変圧器が大きくなります。
理想的な無負荷の単相全波整流器の平均および二乗平均平方根出力電圧は、以下の式で表されます。
Vdc = Vav = 2
Vpeak / π
Vrms = Vpeak / √2
三相整流
三相電源を用いた整流方式です。三相半波整流と三相全波整流があります。
三相半波整流:整流素子を3個使用し、三相電源の全相を半波整流します。
水銀整流器でよく用いられる構成です。
三相全波整流:整流素子を6個使用し、三相電源の全相を全波整流します。
理想的な無負荷の三相全波整流器の平均出力電圧は、以下の式で表されます。
Vdc = Vav = (3√3 Vpeak )/ π
ダイオードの代わりに
サイリスタを使用する場合、出力電圧はcos(α)分だけ減少します。
Vdc = Vav = (3√3
Vpeak cos α )/ π
12相整流
YΔ・YYまたはΔΔ・ΔYの結線の
変圧器を2台1組で使用し、30度位相差の三相
交流を生成します。それぞれを三相全波整流することで、12相整流を実現します。
整流器の応用例
整流器は、以下のような幅広い分野で活用されています。
交流電源から直流電源を得る:パソコンやテレビなどの電子機器は、直流電源で駆動するように設計されています。整流器は、商用電源などの交流電源を直流電源に変換するために使用されます。
高周波プローブ:高周波電圧を測定する際、整流器を使って
交流電圧を
直流電圧に変換し、
直流電圧計で測定します。
AGC回路:受信機のAGC回路で、増幅器の出力電圧を直流に近い電圧に変換し、増幅率を調整します。
電圧調整回路:
分周制御:パルス変調により電圧を調整します。
位相制御:
サイリスタを使用し、ON時間の割合を変化させて出力電圧を制御します。
変圧器タップ切換:変圧器タップにより、整流素子の交流入力電圧を制御します。
力率改善回路:
交流入力電圧波形に合わせた電流入力波形にし、力率改善します。
ピーク電流制御:周波数可変の自励発振によりピーク電流波形を電圧と同相にします。
平均電流制御:周波数固定の他励発振により平均電流波形を電圧と同相にします。
*
平滑コンデンサ:整流回路の出力端子に挿入し、負荷端子間の脈動成分を減らします。
まとめ
整流器は、現代社会において不可欠な電子部品です。その多様な種類と応用範囲を知ることで、より効率的な電子機器の開発や運用に繋げることができます。