回路計

回路計(マルチメーター)とは



回路計(マルチメーター)は、電気回路の様々な電圧電流、抵抗など)を測定できる計測器です。回路試験器とも呼ばれ、JIS規格でその仕様が定められています。内部の計測回路を切り替えることで、直流交流を問わず、幅広い測定に対応します。電気設備の保守点検には欠かせない計測器です。

回路計の種類



一般的に使われる「テスター」は、回路計の一種で、直流電圧直流電流、抵抗、交流電圧などを測定できます。回路計には、指針で数値を表示するアナログマルチメーターと、デジタル表示するデジタルマルチメーターがあります。

アナログマルチメーター


アナログマルチメーターは、アナログテスターとも呼ばれ、広範囲の直流電圧直流電流交流電圧電気抵抗を測定できます。多機能な機種では、交流電流トランジスタ電流増幅率、コンデンサの静電容温度などを測定できるものもあります。

構造

メータ(指針): 測定値を表示する部分。
ロータリースイッチ: 測定レンジを切り替える。
ゼロオーム調整つまみ: 抵抗測定時に0Ωを調整。
測定用端子: テストリードを接続する。
テストリード: 測定対象に接触させるためのリード線

仕様

一般的に、測定器本体を平らな場所に置いて上から覗き込むようにして、指針の値を読み取ります。測定時は、テストリードを端子に接続し、スイッチの切り替えやテストリードの差し込み口を変更することで、測定する回路を選択します。

一般的なアナログマルチメーターの測定範囲は以下の通りです。

直流電圧: 0.1~1000V (または0.12~1200V)
直流電流: 50μA~10A (または60μA~12A)
交流電圧: 2.5~1000V (または3~1200V)
抵抗: 1kΩ~20MΩ

異なるレンジで目盛りを共有するため、各レンジは2.5、5、10または3、6、12の倍数、抵抗は10倍または100倍刻みで設定されています。ただし、交流電圧の最低レンジは、整流器の特性から目盛りが詰まっている場合があります。

使用方法

電圧電流の測定: 測定する値が既知の場合は、その値が測定可能で最も指針が大きく振れるレンジに切り替えます。直流測定時は、赤のテストリードをプラス側、黒のテストリードをマイナス側に接続します。交流測定時は極性はありません。測定値が未知の場合は、まず最大レンジで確認し、適切なレンジに切り替えます。
抵抗の測定: 測定前に、レンジを「抵抗」に切り替え、テストリード先端を接触させてゼロオーム調整つまみを回し、指針が0Ωを指すように調整します。その後、測定物にテストリードを当てて値を読み取ります。電圧電流とは目盛りの向きが逆になることに注意してください。

デジタルマルチメーター


デジタルマルチメーター(DMM)は、測定値をデジタル数字で表示する回路計です。アナログ-デジタル変換回路を使用しており、測定値の読み取りが容易です。

構造

メータ(モニタ): 測定値を表示する液晶ディスプレイ。バックライト内蔵の機種もあります。
ロータリースイッチ: 測定レンジを切り替える。
ブザー: 導通状態を音で示す機能。
測定用端子: テストリードを接続する。
テストリード: 測定対象に接触させるためのリード線

仕様

スイッチの切り替えで、広範囲の直流電圧直流電流交流電圧交流電流、抵抗を測定できます。高級機種では、静電容周波数デューティ比なども測定可能です。小型化されたカード型やペン型の製品もあります。

アナログ式と比較して内部抵抗(入力抵抗)が非常に高く、低電圧、低抵抗、高抵抗の測定に適しています。交流電流の測定機能も標準的に備わっていることが多いです。

測定値が変動する場合は、読み取りが難しいため、測定値保持機能やバーグラフ表示機能が搭載されていることがあります。オートレンジ機能により、測定値に応じて自動的にレンジが切り替わります。

使用方法

基本的な使い方はアナログ式と同じです。直流電圧電流の測定時に極性を逆に接続しても、マイナス表示が出るだけで本体は故障しません。また、抵抗の測定ではゼロオーム調整は不要です。

回路計を使用する際の注意点



測定対象の回路の電源を必ず切ってから測定すること。
適切なレンジを選択して測定すること。
テストリードの接続を間違えないこと。
電圧の測定時は感電に注意すること。
抵抗測定時は、測定対象の一端を回路から外してから測定すること。

主なメーカー



日本

岩崎通信機、エー・アンド・デイ、エーディーシー、カイセ、菊水電子工業、共立電気計器、三和電気計器、テクシオ・テクノロジー、日置電機、横河メータ&インスツルメンツ

日本国外

キーサイト・テクノロジー、ケースレー・インスツルメンツ、フルーク・コーポレーション、リゴル・テクノロジー

関連項目



直流
交流
電圧
電流
電気抵抗
電圧
電流
保守点検用電気計測器

参考文献



三好 正二『基礎テキスト 電気・電子計測』東京電機大学出版局、1995年。ISBN 4-501-10670-0。
* 西野 治『電気計測』コロナ社、1958年。ISBN 978-4-339-00161-7。

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