敵の出方論

敵の出方論についての概要

敵の出方論（てきのでかたろん）は、1961年以降、日本共産党内で使われていた政治的な用語です。この用語を通じて、日本共産党は政権の取得と維持に関連する理論を示しています。具体的には、政権を確立した後に暴力的な反対行動を防ぐことを目的とする一方、日本政府側は、政権獲得前に暴力革命を起こす可能性があると捉えています。このように、敵の出方論は共産党と政府の見解の相違を浮き彫りにし、論争の一因となっています。

敵の出方論の歴史的背景

敵の出方論は、マルクス主義やマルクス＝レーニン主義に基づく歴史的な考え方から派生しています。多くの社会主義の理論家たちが、反動派が暴力的手段を取るかどうかが革命の平和的遂行に影響を与えると考えていました。特に、ドイツ社会民主党指導者のカール・カウツキーや、オーストリアのオットー・バウアーらがこの観点に基づいて議論を展開しました。

レーニンやスターリンが後にこの理論を発展させ、特にレーニンが著作の中で暴力革命不可避論を展開したことで、社会主義運動の中に暴力革命の視点を組み込むことが定着しました。1946年から日本共産党も平和革命論を主張しましたが、1950年にコミンフォルムがこれを批判し、その結果、党内の対立が生じました。1951年には武装闘争路線が採用されることになりましたが、以降の党内の変化によって、暴力革命不可避論と平和革命必然論の両方が否定されることになりました。

敵の出方論の確立とその後

1961年、日本共産党の第8回大会で新しい綱領が採択され、その中で敵の出方論が位置づけられました。この時期から、その内容は党の報告において繰り返し引用されています。1970年には再度詳細に記述され、革命の進展が敵の行動に依存するという立場が確認されました。とはいえ、党の公式文書には明記されることはなく、議論の余地は残されています。

2021年には、党の中央委員会が敵の出方論の表現を使用しないことを決定しています。これは、表現が誤解を招く可能性があるとする理由からですが、根本的な理論の誤りを認めているわけではありません。

日本政府の立場

日本政府は、敵の出方論が未だに暴力革命の思想を維持しているとみなしています。公安調査庁は日本共産党を破壊活動防止法に基づく調査対象団体として位置付けており、その理由には過去の党内文献や理論が含まれています。特に、政府は敵の出方論が現在も党内の思想として存在することを強調しており、これは党の革新を求める外部の批判の一因ともなっています。

結論

敵の出方論という用語は、日本共産党内外でさまざまな意見を呼んでおり、政治的な立場や解釈によって認識が異なります。共産党はこの理論を現在は公式に使用しないことを決定したものの、根本的な議論は続いており、党外側からの見方は依然として厳しいものがあります。このように、敵の出方論は日本の政治における重要なテーマの一つとなっており、今後も関心を集める問題であると言えるでしょう。

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