斂葬の儀

斂葬の儀（れんそうのぎ）について

斂葬の儀は、天皇や皇族といった高貴な存在が亡くなった際に行われる本葬の儀式です。この儀式の名称に含まれる「斂」という字は、「収斂」を思わせるように「納める」という意味を持っています。したがって、斂葬とは「死者を棺に納めて埋葬すること」を指します。

歴史と背景

斂葬の儀が現在の形式で行われるようになったのは、1873年（明治6年）に明治天皇の第一皇子である稚瑞照彦尊の薨去以降のことです。それ以前の皇族の葬儀については、詳細な記録が少なく、文化的背景や風習が異なっていたことがうかがえます。

この儀式は、皇室典範に直接明記されている訳ではありませんが、一般的には皇族の葬儀に関する慣例に基づいており、正式な国の儀式である「大喪の礼」とは異なる性格を持ちます。

実施の構成

斂葬の儀は、主に二つのセクションから成り立っています。第一のセクションは「葬場殿の儀」で、ここでは供物が霊前に捧げられ、天皇が御誄（おんよみ）を読み上げて拝礼します。第二のセクションは「陵所の儀」で、実際に埋葬が行われます。

皇族の葬儀の流れ

斂葬の儀は、通常、以下の手順で行われます。まず、皇族が死亡すると、その遺体は宮邸に安置されます。

1. 御舟入りの儀 - これは納棺の儀式で、遺体が棺に納められます。
2. 拝訣 - 天皇、皇后、その他の皇族による弔問が行われます。
3. 正寝移柩の儀 - 遺体は、その皇族が居住していた邸宅の正寝に移されます。
4. 通夜 - 正寝で数日間、通夜の儀式が行われます。
5. 轜車発引の儀 - 轜車を用いて、遺体が邸宅から豊島岡墓地へ移送されます。
6. 斂葬の儀 - ここでは、「葬場の儀」と「墓所の儀」が執り行われます。
- 葬場の儀では、勅使や皇后宮使が葬儀を行い、古くからの慣習に従い、皇族は出席せずに使者を派遣します。告別式として一般拝礼も行われます。
- 出棺、火葬後、墓所の儀として、遺骨が墓に埋葬されます。
遺体が埋葬された後は、土を盛り仮の塚を設け、数日間一般の人々の拝礼を受け付けます。正式な墓が造営されるのはその後のことで、これによって葬儀は一通りの流れを終えます。

天皇と皇后の役割

特に天皇や皇后は、葬儀の際には控えめに振る舞い、諒闇の服を着用することが一般的です。このように、斂葬の儀は皇族の葬送を敬意をもって行う重要な儀式であることが理解されます。

この儀式を通じて、天皇や皇族の霊を大切にし、その功績や生涯を振り返る機会が設けられます。

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