文化放送ASMR特番

「文化放送ASMR特番」は、日本のラジオ局である文化放送が制作・放送している特別番組です。主に聴取率調査週間を前にした日曜深夜、通常は放送休止となっている時間帯に、聴取習慣を喚起する目的で不定期に編成されていました。2020年10月以降は、公式にこの名称が番組名として用いられるようになっています。

番組のサブタイトルは毎回異なり、放送されるテーマに合わせて付けられます。その特徴として、ライトノベルのタイトルを思わせるような、非常に長いタイトルが用いられることが挙げられます。正式番組名となる以前は、文化放送ASMR特番という名称が番組全体の総称として、主に公式SNSアカウントで用いられていました。

企画の背景と特徴

文化放送では、原則として月曜早朝（日曜深夜）の午前2時から5時までの時間帯は放送休止としています。この慣例は聴取率調査週間の期間前であっても同様でした。しかし、2010年代後半からは、この時間帯に限り、聴取率調査週間への導入として特別な番組を編成する試みが見られるようになりました。これには、『武井壮のガッとしてビターン！』のような単発特番や、『おはよう寺ちゃん活動中』、『古賀シュウ 3時半の三枚おろし』といったレギュラー番組から派生した企画などが含まれます。

このような背景の中、「文化放送ASMR特番」の企画が誕生しました。その着想源の一つとなったのは、ノルウェーの公共放送局であるノルウェー放送協会が2013年に放送した『全国薪の夕べ』という12時間の特別番組です。この番組は、8時間もの間、ただ薪が燃えている映像を流し続けるという内容ながら、20％という高い視聴率を獲得しました。この成功に注目した文化放送は、「音への並々ならぬこだわりを持つ」と評される音声スタッフの精鋭チームを結集させ、新たな音響体験を提供する番組企画を進めました。

そして2019年 12月に第1弾が放送されると、リスナーから大きな反響を得ました。この反響を受けて、番組は定期的に放送されるようになりました。

本番組の最大の特徴は、最先端の音響技術である3Dオーディオ技術を駆使して演出・編集が行われている点です。これにより、リスナーはより没入感のある聴取体験を得ることができます。そのため、番組ではワイドFMやRadikoを通じて、ヘッドフォンを使って聴取することが強く推奨されています。

展開と話題

放送された過去の番組内容は、文化放送のポッドキャストサービスを通じて配信されており、放送後でも楽しむことが可能です。また、2020年8月28日には公式Twitter（現X）アカウントが開設され、番組の録音過程や制作の裏側に関する情報などが積極的に発信されています。

いくつかの放送回は特に話題となりました。

第7弾（2020年12月） - 笑い屋さん特番: この回は番組史上初の生放送として実施されました。企画内容はユニークで、リスナーからTwitterを通じて「笑い飛ばしてほしいこと」を募集し、寄せられたツイートをプロの笑い屋6名が読み上げ、ひたすら笑い続けるというものでした。
第14弾（2022年1月） - 鉛筆特番: この回では、当時の文化放送社長である斉藤清人が試験官役として番組に出演し、話題となりました。

関連する取り組み

文化放送は、本番組以外にも音に焦点を当てた様々な企画を展開しています。

『TOKYO 1 HOUR』: 2022年1月より開始された、東京の日常音をテーマにした企画です。文化放送ポッドキャストおよびYouTubeを通じて、主に海外に向けた配信が行われています。
「朝の小鳥」コラボ: 2022年11月には、文化放送の長寿番組「朝の小鳥」とのコラボレーションが実現しました。過去に放送されたたき火特番の音源と、小鳥の鳴き声を組み合わせた音源が制作され、文化放送ポッドキャストおよびYouTubeで配信されています。

また、文化放送以外でも、同様に音に特化した特別番組を制作する例が見られます。例えば、長崎放送では2020年10月19日深夜に、類似の特番として「深夜のごちそうカラッ、サクッ、ジュワ～唐揚げ特番」を放送しています。

「文化放送ASMR特番」は、ラジオの特性である「音」を最大限に活かし、聴取体験の新たな可能性を追求する試みとして、注目を集めています。

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