文化省 (フランス)

フランス文化省は、1959年2月3日にシャルル・ド・ゴールによって設立された、フランスの文化行政を担う重要な省庁です。初代文化大臣には、作家でありレジスタンス運動家でもあったアンドレ・マルローが任命されました。文化省は、絵画、彫刻、建築といった伝統的な芸術分野だけでなく、演劇、舞踊、文学、映画、オペラ、装飾芸術など、非常に幅広い分野を管轄しています。国内外での文化保護・振興策を推進し、国立博物館、美術館、公文書館、歴史的建造物、地域の文化施設などを管理しています。

文化省の歴史的背景

フランスにおける文化保護の歴史は、ルネサンス時代にまで遡ります。イタリアやブルゴーニュ公国の宮廷文化に影響を受け、芸術を保護・後援する風潮が生まれました。16世紀頃からは、自国の芸術・文化の発展が国威発揚に繋がるという考え方が浸透し、アンシャン・レジーム期にはアカデミー・フランセーズや王立絵画彫刻アカデミーの設立など、具体的な政策が実施されました。特にルイ14世と財務総監ジャン＝バティスト・コルベールによる政策は、芸術保護と国家の威信を密接に結びつけ、国家による補助金やタペストリー工房の保護などが積極的に行われました。

ド・ゴールとマルローによる文化政策

現代におけるフランスの文化保護政策は、シャルル・ド・ゴールによって再興されました。ド・ゴールは、アンドレ・マルローを初代文化大臣に任命し、「偉大なフランス」の概念を文化面から追求しました。マルローは、文化への接近の民主化、すなわち「文化の権利」という概念を提唱し、新たな憲法と世界人権宣言に盛り込むことで、戦後フランスの威信を世界に発信しようとしました。文化大臣として、マルローは国内各地に文化センターを設置し、文化活動を積極的に支援しました。

ミッテランとラングによる文化政策

フランソワ・ミッテラン大統領もまた、文化政策の重要性を認識しており、文化大臣としてジャック・ラングを重用しました。ラングは、Festival du Mondeを設立したプロデューサーであり、ジャズ、ロックンロール、ラップ、ストリートアート、漫画、ファッション、食文化を含む幅広い大衆文化を文化省の管轄としました。彼の「経済と文化、それは戦いである」という言葉は、「文化民主主義」と国家による積極的な文化支援の象徴となりました。ラングは、音楽の祭典「Fête de la Musique」を創設し、フランス革命200周年記念式典の演出を担当しました。また、ミッテラン大統領とラングは、パリの大改造を推進し、フランス国立図書館、ルーヴル美術館のガラスのピラミッド、オルセー美術館など、多くの文化的施設を建設しました。

近年の文化政策

近年では、ジャック・ツーボンが文化大臣を務め、「ツーボン法」を制定しました。この法律は、フランス語を保護する目的で、外来語（特に英語）の使用に制限を加え、ラジオ放送におけるフランス語の歌の割合を定めました。

文化省の組織

文化省は、総務局、建築・遺産局、フランス公文書館局、書籍・文学局、音楽・舞踊・演劇・芸能局、フランス国立博物館局などの内部部局を持ちます。また、メディア開発局、造形美術委員会、国際開発委員会、フランス語・方言に関する一般委員会といった外部部局も存在します。文化省は、国立映画センターの管理・運営にも関与しています。

その他の活動

文化省は、地域圏単位の文化行政（DRAC）や、地方行政区画単位の建造物管理（SDAP）も運営しています。また、地方行政区画単位の古文書館の管理も担当しています。

歴代文化大臣

歴代の文化大臣には、アンドレ・マルロー、ジャック・ラング、ジャック・ツーボンなど、著名な人物が名を連ねています。現在の文化大臣は、フランソワーズ・ニセンです。

不祥事

過去には、文化省の人事部長による性的暴行事件が発生し、裁判所が省に対して被害者への損害賠償を命じました。

フランス文化省は、フランスの文化と芸術を保護・振興するために、多岐にわたる活動を行っています。その歴史と政策は、フランスのアイデンティティと深く結びついており、世界中の文化政策のモデルとなっています。

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