文学修士 (オックスフォード・ケンブリッジ・ダブリン)

オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、ダブリン大学の文学修士号 (MA)

オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、そしてダブリン大学では、他の多くの大学とは異なる特異な学位制度が採用されています。これらの大学では、文学学士号を取得した卒業生が、一定の条件を満たせば、追加の試験や研究を行うことなく、文学修士号（Master of Arts、略称MA）を取得できるのです。

このMAは、一般的に理解されている大学院修士号とは異なります。追加の授業や論文提出は不要であり、大学における地位の昇格、いわば名誉ある称号と捉えるべきでしょう。卒業生は、一定期間の大学との関わり（在籍期間や勤務期間など）を経た後、申請によってこの称号を得ることができます。これは、長年にわたる大学への貢献や、大学コミュニティへの所属を示す一種の証でもあると言えるでしょう。

各大学の制度

各大学において、MA取得のための条件は若干異なります。共通しているのは、学士号取得後、一定期間が経過する必要がある点です。

オックスフォード大学: 通常、学士号取得後7年経過（入学後21期目）後に申請可能となります。ただし、博士号取得者はこの期間が免除される場合もあります。美術学士号（BFA）取得者も同様の制度が適用されます。
ケンブリッジ大学: 学士号取得後、少なくとも2年間保持し、最初の在学期間終了後6年経過後に申請可能となります。さらに、ケンブリッジ大学卒業者以外でも、大学やカレッジの上級職員として3年間勤務していれば、MAを取得できる道が開かれています。
* ダブリン大学: ダブリン大学の学士号（または9学期以上の在学期間を経た他の学士号）取得後3年以上経過していれば、申請可能です。ただし、入学金（2012年当時637ユーロ）が必要ですが、50年以上経過した卒業生は免除されます。

他の修士号との違い

オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、ダブリン大学には、MAとは別に、本格的な大学院課程修了を必要とする他の修士号（M.Litt.、M.Phil.、M.St.、MEng、M.Sc.など）が存在します。これらの学位は、高度な研究や論文提出を伴い、MAとは明確に区別されます。MAは大学における地位を表す称号であるのに対し、他の修士号は学術的な成果を証明する学位と言えるでしょう。

アド・エウンデム学位

興味深い点として、これらの3大学間では、「アド・エウンデム学位（Ad eundem gradum）」という制度が存在します。これは、いずれかの大学でMAを取得した者が、他の2大学においても、追加の審査なしに同等の学位を授与される制度です。しかし、各大学はこの制度の適用範囲を限定しており、大学への貢献や所属といった条件を設けています。例えば、ダブリン大学トリニティ・カレッジでは、教職員やダブリンの高等教育機関への登録希望者への限定、ケンブリッジ大学では大学の一員として入学した者への限定、そしてオックスフォード大学では大学への貢献者への限定などが行われています。

古代スコットランドの大学

歴史を遡ると、古代スコットランドの大学においても、特定の科目の卒業生に同名の学位が第一学位として授与される例が見られます。これは、これらの大学における学位制度の複雑さと歴史的変遷を示す興味深い一例と言えるでしょう。

まとめ

オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、ダブリン大学のMAは、世界的に見ても特異な学位制度です。これは、大学院課程修了による学位ではなく、大学における地位や貢献を反映した名誉ある称号であり、各大学の伝統と歴史に深く根ざした制度と言えるでしょう。この制度を理解するためには、単に学位名だけでなく、大学における地位や歴史的背景も考慮する必要があるでしょう。

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