文挾夫佐恵

文挾夫佐恵（ふばさみ ふさえ）は、1914年1月23日に東京で生まれ、2014年5月19日に100歳で亡くなった俳人です。彼女は東京府立第五高等女学校を卒業後、小学校時代から俳句を始めました。

1934年には上川井梨葉が主宰する俳句結社「愛吟」に入会し、本格的に俳句の道へと進みます。その後、1944年には飯田蛇笏が主宰する「雲母」に入会し、さらに俳句の腕を磨きました。また、同門の石原八束の家で行われた、三好達治を囲む文章会にも参加し、俳句だけでなく文学的な交流も深めていきました。

1961年、文挾夫佐恵は石原八束とともに俳句結社「秋」を創刊し、同人として活動しました。1998年に石原八束が亡くなると、「秋」の主宰を引き継ぎ、2006年まで務めました。その後、佐怒賀正美に主宰を譲り、自身は名誉主宰となりました。

彼女は数々の賞を受賞しており、1965年には第12回現代俳句協会賞、2007年には句集『青愛鷹』で第7回俳句四季大賞を受賞しました。2011年には第2回桂信子賞、2013年には句集『白駒』で、当時99歳という史上最高齢で第47回蛇笏賞を受賞しました。

文挾夫佐恵は、その生涯を通じて多くの句集を刊行しました。主な句集には、『黄瀬』（1966年）、『葛切』（1974年）、『天上希求』（1981年）、『井筒』（1995年）、『時の彼方』（1997年）などがあります。また、共著として『私の昭和俳句』も発表しています。これらの作品は、彼女の豊かな感性と、独自の視点を通して捉えられた自然や人生の機微が表現されており、多くの読者に感動を与えています。

2014年5月19日、文挾夫佐恵は老衰のため東京都中野区の病院で亡くなりました。彼女の100年にわたる生涯は、俳句の世界に大きな足跡を残し、その作品は今も多くの人々に愛され続けています。

文挾夫佐恵の俳句は、伝統的な俳句の形式を踏襲しながらも、彼女自身の個性的な感性が光る作品が多いのが特徴です。自然の美しさや人間の感情を繊細に捉え、言葉の選び方や表現にも独自の工夫が凝らされています。彼女の作品は、俳句を専門とする人だけでなく、俳句に馴染みのない人にも読みやすく、その奥深い世界に触れることができるでしょう。

彼女は、俳句の世界において、女性俳人の先駆者の一人としても評価されています。その活躍は、後進の女性俳人たちに大きな勇気と希望を与え、俳句の世界に新たな可能性を切り開きました。

文挾夫佐恵の作品は、これからも多くの人々に読まれ、その魅力が語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索