文楽座

文楽座：人形浄瑠璃の劇場の歴史

文楽座は、大阪にかつて存在した人形浄瑠璃の劇場であり、その影響力から「文楽」という名は江戸時代以降の人形浄瑠璃全般を指すことが少なくないが、厳密には「文楽」自体は特定のスタイルを指している。この劇場の名が今も残るのは、1955年に文化財保護法に基づき重要無形文化財に指定された「人形浄瑠璃文楽」を演じる劇団に結びついているからである。

沿革

文楽の起源は、江戸時代の天明から寛政（1781-1800年）にさかのぼる。淡路で生まれた植村文楽軒が大阪に出て、高津新地に人形芝居の座を設けたのが始まりだ。文化7年（1810年）に文楽軒が亡くなると、二代目は座を難波新地に移し、「いなりの芝居」として親しまれた。三代目文楽軒は、明治5年（1872年）に大坂松島新地に新たな劇場を設立し、「文楽座」と命名。しかし、対抗する彦六座などが出現し、明治17年（1884年）には御霊神社の境内に移転し、「御霊文楽座」として全盛を誇った。この頃から人形浄瑠璃は「文楽」と呼ばれるようになっていった。

1909年に松竹が文楽座を引き継いだが、1926年には火災により焼失。この後、一時的に道頓堀弁天座での興業が行われた後、1927年に四ツ橋文楽座として新しく建設された。この劇場は近代的な洋風の建物で850席を有し、興業形態を見直すことにもなったが、1945年の大阪大空襲で再び焼失。翌年、老松町に移転し「老松松竹の劇場」として興業を再開した。

1946年には急遽バラックで再建されたが、老朽化が進み、1956年には道頓堀に新しい文楽座が開場した。この劇場は1000席を持ち、人形浄瑠璃が本格的に道頓堀に復帰する形となった。しかし、興行成績が振るわず、1960年に松竹は劇場の土地と建物を他社に譲渡し、その運営権も放棄。1963年に文楽は松竹の手を離れ、大阪府や大阪市、文部省、NHKの後援を受ける形で文楽協会が設立され、再統一へと進んだ。

劇場名は「文楽座」から「朝日座」に改称されたが、その後も人形浄瑠璃興業は定期的に行われ続けた。1984年には道頓堀朝日座が閉館となり、代わって大阪・日本橋に国立文楽劇場が開場したことで、人形浄瑠璃の公演が定期的に行われる舞台が整った。

現在、文楽座の名前は「人形浄瑠璃文楽座」として残っており、1955年には重要無形文化財に指定され、さらにユネスコによる登録もなされている。今もその豊かな伝統が受け継がれている。

跡地情報

• - 御霊文楽座: 御霊神社境内に「御霊文楽座跡」を示す石柱が建立。
• - 四ツ橋文楽座: 現在は大丸心斎橋店の提携駐車場ビル。
• - 道頓堀文楽座: テナントビルとして利用され飲食店などが入居。

このように文楽座の歴史は、ただの劇場を越え、日本の人形浄瑠璃文化の象徴として続いている。

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