斉栄顕

斉栄顕（さい えいけん）

斉栄顕（生没年不詳）は、金朝末期からモンゴル帝国初期にかけて活躍した人物です。彼は、東平地方を支配する漢人世侯の一人、厳実に仕えていました。

生涯

斉栄顕の父、斉旺は金朝に仕え、山東西路兵馬都総管を務めました。斉栄顕は幼い頃から聡明で、9歳にして父に代わり千戸となります。その後、母方の従伯父である厳実とともにモンゴル帝国に帰順し、濠州攻めなどで功績を挙げました。モンゴル帝国のヒタイ（華北）方面司令官、チャガンは斉栄顕の武勇を称え、馬・鎧・銀器を与えました。

モンゴル軍が五河口に進むと、大堤に差し掛かりました。斉栄顕は数騎を率いて偵察に出た際、敵軍の偵察兵に遭遇します。従者は退却を進言しましたが、斉栄顕は「敵兵は我が方よりも少ない。ここで怯懦な姿勢を示せば、敵は必ず勢いに乗って攻めてくるだろう」と述べ、弓で敵兵2人を射殺してから帰還しました。

五河口が陥落すると、斉栄顕は行軍万戸に昇格し、宿州に駐屯しました。しかし、落馬によって股に傷を負ったため、従軍ができなくなります。これ以後、斉栄顕は提領本路課税・本路諸軍鎮撫兼提控経歴司など、様々な官職を歴任しました。厳実とともに入朝した際には、東平路総管府参議・兼領博州防禦使の地位を授けられました。この頃、モンゴル領公に対する投下領の分配が行われていましたが、斉栄顕は自らのいる博州が東平から引き離されそうになると、朝廷に訴え出てこれを阻止しました。

1235年（乙未）よりクチュの南宋遠征が始まると、東平地方が進軍路となり、周辺の民は2万錠の供出を命じられました。民が困窮することを察した斉栄顕は断事官にかけあい、民の負担を軽減しました。中統元年（1260年）より10年にわたって閑居した後、亡くなりました。

斉栄顕は、武勇に優れるだけでなく、民を思いやる心を持ち、地域の安定に貢献した人物として評価されています。

参考文献

井ノ崎隆興「蒙古朝治下における漢人世侯 : 河朔地区と山東地区の二つの型」『史林』37号、1954年
『元史』巻152列伝39斉栄顕伝

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