斎宮行列

斎宮行列（さいくうぎょうれつ）

京都の景勝地として知られる嵯峨嵐山で、毎年十月の第三日曜日に開催される「斎宮行列」は、平安時代に行われた斎王の伊勢下向という歴史的儀式を現代に再現する、雅やかな伝統行事です。

この祭事は、かつて伊勢神宮に仕えるために選ばれた未婚の皇女、斎王（斎宮）が、出発に先立って清めの儀式（潔斎）を行ったとされる「野宮」に深く関わっています。祭りの主催は、現在の野宮神社内に置かれている斎宮行事保存会が担っており、斎宮と野宮の由緒を今に伝える重要な役割を果たしています。

斎宮行列は、平成11年（1999年）に「斎宮夢行列」として第一回が開催されて以来、毎年欠かすことなく続けられ、多くの人々に親しまれています。祭りの最大の魅力は、平安時代の装束を忠実に再現した衣を纏った人々が繰り広げる、壮大な行列（群行）です。斎宮代役を中心に、多様な従者を伴った一行は、野宮神社を出発点とし、風光明媚な嵯峨嵐山の竹林周辺から、賑わう嵯峨嵐山駅前を経由し、桂川に架かる渡月橋を目指して粛々と歩みを進めます。行列の終盤では、渡月橋のたもと、大堰川の清流のほとりで、斎王が身を清めたとされる「禊の儀」が厳かに執り行われ、祭りのハイライトを飾ります。

この斎宮行列の特徴の一つに、広く一般からの参加を募っている点が挙げられます。三重県の「斎王まつり」、滋賀県の「あいの土山斎王群行」と並んで「三大斎王群行」と称されることもありますが、中でも京都の斎宮行列は、他の二つが書類選考などを行うのに対し、所定の参加費用を納めることで物理的には誰でも行列の一員として参加できるという、門戸の広さが特筆されます。ただし、行列の中心となる斎宮代役については、一般からの公募は行われていません。

行列に参加できる役柄は多岐にわたり、平安時代の身分や役割に応じた様々な装束を体験することができます。主な公募役柄には以下のようなものがあります。

乳母（めのと）: 袿（うちぎ）を纏い、群行や禊の儀に参列する女性の役柄です。
命婦（みょうぶ）: 乳母と同様に袿姿で、群行および禊の儀に参加する女性の役柄です。
采女（うねめ）: 采女装束と呼ばれる独特の装いをし、群行に参加する女性の役柄です。
女嬬（にょじゅ）: 袿を着て群行に参加する女性の役柄です。
監送使（けんそうし）: 束帯（そくたい）姿で馬に乗り、群行と禊の儀に参列する男性の重要な役柄です。
山城守（やましろのかみ）: 束帯姿で群行および禊の儀に参列する役柄です。
山城介（やましろのすけ）: 束帯姿で群行に参加する役柄です。
輿丁（よちょう）: 特殊な衣装を身に着け、斎宮代が乗る葱華輦（そうかれい）と呼ばれる輿を担いだり、牛車を引いたりする男性の役柄です。
戸座（へざ）: 童水干（わらべすいかん）を着て群行と禊の儀に参列する、小学生の男の子の役柄です。
火矩小女（ひのこおとめ）: 袿を着て群行と禊の儀に参列する、小学生の女の子の役柄です。
* 稚児（ちご）: 稚児装束を纏い、群行に参加する幼稚園児から小学生までの男女の役柄です。

これらの様々な役柄を通じて、参加者は平安時代の宮廷文化や斎王の旅路に思いを馳せることができます。なお、祭りは雨天時には中止となることがあります。

斎宮行列は、古都京都の歴史と文化を肌で感じられる貴重な機会であり、多くの観光客や地元の人々に愛されています。歴代の斎宮代役は記録されており、その時代の顔として行列を彩ってきました。嵯峨嵐山の美しい景観を背景に繰り広げられるこの行列は、訪れる人々に平安王朝の雅やかな雰囲気と、歴史への浪漫を感じさせてくれることでしょう。

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