斬人斬馬剣

『斬人斬馬剣』の概要

『斬人斬馬剣』（ざんじんざんばけん）は、1929年に公開された日本のサイレント映画で、剣戟映画の一つです。この作品は、伊藤大輔が監督・原作・脚色を手がけ、悪政に苦しむ農民たちを救うために立ち上がった浪人の物語が描かれています。この映画は、当時流行していた左翼思想の影響を受けた「傾向映画」として高く評価されています。

映画内では、カットバックや移動撮影などの技術が用いられ、斬新な映像表現が観客に強い印象を与えました。特に、1929年度のキネマ旬報ベストテンでは第6位に選ばれており、その芸術性が広く認知されています。また、主演を務めた月形龍之介もこの作品を「役者人生の中で最もお気に入りの一作」と語っており、彼自身のキャリアにおける重要な役割を果たしました。

スタッフとキャスト

この作品の制作には多くの優れたスタッフが関わりました。監督である伊藤大輔は、同年に独立して経営していたツキガタプロダクションを畳み、松竹に入社した際の第1作でもあります。撮影を手がけた唐沢弘光も伊藤とのコンビで知られています。

主要なキャストとしては、月形龍之介（十時 来三郎）、金子弘（長曾根）、天野刃一（弟左源太）などの名優が名を連ねています。役者たちの力演が、物語をより深く印象づける要素となっています。

制作と公開

『斬人斬馬剣』は、松竹キネマ京都撮影所で製作されました。この映画は、通常の30倍の製作費をかけて撮影され、大規模なロケーションも行われています。その成果として、映像のクオリティは非常に高く、映画史においても特筆すべき作品となりました。

公開日は1929年9月20日で、浅草の松竹直営の洋画専門館・帝国館が旗艦館として上映を行いました。観客から受けた反響は大きく、作品のもつメッセージと映像美を多くの人々が評価しました。

現在の状況

『斬人斬馬剣』は、長い間フィルムが現存しないとされていましたが、2002年に東京都の映画作家・寺澤敬一によって9.5ミリフィルムのダイジェスト版が発見されました。このフィルムは東京国立近代美術館フィルムセンターに寄贈され、同センターはオランダの専門ラボに依頼してデジタル復元を行いました。結果として、同センターが所蔵しているのは「1秒間18コマ、26分の35ミリプリント」となりました。

さらに、このプリントは2003年に「発掘された映画たち2003」として上映され、映画史の重要性を再認識させる機会を提供しました。また、2005年には松竹創立110周年を記念してポルデノーネ無声映画祭で特集上映されるなど、過去の映画を今に伝える貴重な作品として注目を集め続けています。

まとめ

『斬人斬馬剣』は、その思想的背景と映像技術が高く評価される日本映画の代表作の一つです。過去の経緯を経て発見されたフィルムは、現代においても映画の魅力を新たにする貴重な資料となっています。

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