帝国館

帝國館（ていこくかん）

帝國館は、かつて日本各地に存在した映画館の名称です。中でも特に知られているのは、東京の浅草に存在した映画館で、浅草ROXの場所にありました。ここでは、浅草の帝國館を中心に、その歴史と概要を解説します。

浅草帝國館の歴史

ルナパーク内映画館として誕生

帝國館は、1910年（明治43年）9月10日に、浅草公園六区（現在の東京都台東区浅草1丁目43番）に開業しました。場所は、かつて「日本パノラマ館」があった場所で、吉沢商店が建設した遊園地「ルナパーク」の中に内包される形でオープンしました。

当時のルナパークは、ニューヨークのコニーアイランドを模したもので、写真館、物産店・飲食店、天文館、木馬館などがある一大エンターテイメント施設でした。帝國館は、吉沢商店が製作する映画の専門館としての役割を担っていました。

焼失と再建、そして日活から松竹へ

1911年（明治44年）4月29日、ライド型アトラクション「汽車活動写真館」からの漏電が原因で火災が発生し、帝國館を含むルナパーク全体が焼失してしまいます。翌1912年（明治45年）に再建されましたが、吉沢商店は他の会社と合併して日活となり、ルナパークも1913年（大正2年）に閉鎖されました。

その後、帝國館は大阪の「三友倶楽部」の山川吉太郎が設立した東洋商会の経営となり、同社の映画を上映する映画館となりましたが、東洋商会は1914年（大正3年）に活動を停止しました。その後、小林喜三郎の手に渡り、この頃には週刊ニュース「第一新聞」が発行されていました。1917年（大正6年）には、活動弁士の生駒雷遊が主任弁士となり、1919年（大正8年）頃には津田秀水が人気を博しました。

松竹の洋画劇場として

1921年（大正10年）3月12日、松竹は帝国活動写真から浅草帝国館、赤坂帝国館、横浜角力常設館を買収し、浅草帝国館を松竹洋画の専門館として、海外の映画を上映するようになりました。1923年（大正12年）9月1日の関東大震災で浅草一帯が壊滅的な被害を受け、帝國館も倒壊しましたが、再建後は松竹洋画の拠点として再び活気を取り戻しました。

1925年（大正14年）2月27日には、帝国館と新宿武蔵野館がパラマウント映画の『十誡』を同時に公開し、話題となりました。1927年（昭和2年）には、僊石政太郎の設計によって改築され、この建物は1980年代まで使用されました。1943年（昭和18年）2月11日には、「浅草松竹映画劇場」と改称し、松竹が製作する映画を上映する劇場となりました。

1983年（昭和58年）、浅草松竹映画劇場は閉鎖・廃業となり、建物は解体されました。跡地には浅草ROXが建設されました。浅草松竹映画劇場の閉館後、かつて金龍館だった浅草ロキシー映画劇場が二代目「浅草松竹映画劇場」となりました。

その他の帝國館

大正末期の1924年から1926年にかけての資料によると、浅草以外にも各地に「帝國館」という名前の映画館が存在していました。

札幌市南三條
盛岡市長町
仙台市南町通り
耶麻郡喜多方町
前橋市榎町
邑楽郡館林町
高崎市連雀町
早稲田帝国館（東京市牛込区早稲田）
帝国館（東京市赤坂区見附）
帝国館（北豊島郡板橋町）
品川帝国館（荏原郡品川町歩行新宿）
帝国館（豊多摩郡渋谷町恵比寿駅前）
鶴見帝国館（橘樹郡鶴見町）
帝国館（足柄下郡小田原町幸）
帝国館（富士郡大宮町）
帝国座（富山市総曲輪）
帝国館（金沢市森下町）
帝国館（豊橋市上伝馬町）
帝国館（宇治山田市本町）
帝国館（彦根市）
帝国館（大津市甚七町）
西陣帝国館（京都市上京区大宮通寺ノ内上ル芦山寺）
帝国館（京都市下京区新京極通）
帝国館（京都市上京区御前通上立売西入）
帝国館（紀伊郡伏見町）
帝国館（加佐郡新舞鶴町）
帝国館（岡山市天瀬）
帝国館（呉市本通6-22）
帝国館（鳥取市川端1丁目）
帝国館（丸亀市）
帝国館（高知市帯屋町）
帝国館（今治市辰の口）
博多帝国館（福岡市蓮池町）
帝国館（別府市日の出町）
帝国館（宮崎市黒迫町）
帝国館（鹿児島市山之口町）
帝国館（那覇市）
帝国館（関東州大連市）

これらの帝國館は、それぞれの地域で映画文化を支える役割を果たしていました。

関連事項

日本パノラマ館
ルナパーク (浅草)
金龍館
松竹座
松竹館
国際キネマ劇場
* 日本館

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