断眠療法

断眠療法とは

断眠療法は、うつ病の治療法の一つで、患者を意図的に夜間眠らせないことで、うつ症状の改善を図るものです。この治療法は、1971年にドイツの研究者によって初めて報告され、その効果が確認されて以来、ヨーロッパを中心に広く行われるようになりました。

断眠療法の歴史

1971年、ドイツのPflugとTolleによって、うつ病患者を一晩徹夜させることで、その直後からうつ症状が劇的に改善することが報告されました。この発見を契機に、断眠療法は欧米を中心に広く用いられるようになり、その有効性が多くの研究によって確認されています。特にドイツ、イタリア、スイスなどのヨーロッパ諸国では、断眠療法に関する研究が盛んに行われてきました。

断眠療法の種類

断眠療法には、いくつかの種類があります。

全断眠: 夜間、全く睡眠を取らない方法で、最も基本的な断眠療法です。
夜間後半部分断眠: 通常の時間に入眠し、午前2時頃に覚醒させて、その後は起きている状態を保つ方法です。
夜間前半部分断眠: 夜間の早い時間帯に睡眠を取り、途中から覚醒して起きている状態を保つ方法です。

効果に関しては、「全断眠」と「夜間後半部分断眠」は同程度であるという報告がある一方、「夜間後半部分断眠」の方がやや効果が低いとする報告もあります。「夜間前半部分断眠」は、他の2つの方法に比べて効果が低いと考えられています。

断眠療法の適応

断眠療法は、「うつ病」と「躁うつ病のうつ病相」に対して有効であることが実証されています。特に、薬物療法での効果が乏しい場合や、うつ状態が長く続いている場合に適用されることが多いです。一方で、「神経症」によるうつ状態には、あまり効果が期待できません。また、「パニック障害」や「てんかん」を合併している患者は、断眠によって発作が誘発されるリスクがあるため、この治療法の適用は避けるべきです。

断眠療法の特徴

断眠療法は、抗うつ薬による薬物療法と比較して、効果が現れるのが非常に早いという特徴があります。薬物療法では効果が現れるまでに2週間以上かかることが多いのに対し、断眠療法では、断眠の直後から抗うつ効果が現れます。重いうつ状態から劇的に改善するケースも少なくありません。しかし、効果が持続しない場合が多く、断眠後に睡眠をとると、うつ症状が再発することがあります。

併用療法

断眠療法の効果をより長く持続させるためには、他の治療法との併用が推奨されます。例えば、抗うつ薬などの薬物療法、高照度光療法、睡眠時間帯をずらす方法などを組み合わせることで、より効果的な治療が期待できます。

関連項目

徹夜
うつ病
躁うつ病（双極性障害）
光療法（高照度光療法）

脚注

[参考文献]
精神科治療学　Vol.17増刊号　気分障害のガイドライン　「第5章　治療法の解説　断眠療法」　2002年10月　星和書店
睡眠医療　第2巻 第1号 2007　特集　うつと睡眠をめぐって　「8.うつ病の時間生物学的治療」　（株）ライフサイエンス

[外部リンク]
断眠療法によるうつ病治療

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