断絶 (小説)

断絶

『断絶』は、堂場瞬一による日本の推理小説であり、同作を原作としたテレビドラマです。地方都市を舞台に、政治家の後継者問題、企業の暗部、そして殺人事件が複雑に絡み合う物語が展開します。それぞれの登場人物の思惑や葛藤が描かれ、社会の深層に迫る重厚なミステリーです。

あらすじ

物語は、11月下旬の寒さが押し迫る時期に始まります。長年地元で権勢を誇る大物代議士、剱持隆太郎が引退を決意したことから、後継者指名問題が浮上します。隆太郎は、一人息子の一郎を後継者にしようと考えており、そのための教育を施してきたといっても過言ではありません。しかし、秘書の椎名から一郎に関する相談を受けたことで、隆太郎は正義感と倫理観の間で苦悩し、最終的に一郎のため、そして地元である汐灘の将来のため、ある工作を企てます。

翌朝、汐灘の海岸で、顎を散弾銃で撃ち抜かれた女性の遺体が発見されます。顔が半分崩れているため身元は不明でしたが、状況や鑑識の結果から、自殺と判断されます。しかし、遺体が妊娠していたことや、女性が猟銃で自殺するという例が少ないことから、県警本部の刑事である石神謙は自殺とは断定せず、捜査を開始します。捜査が進まない中、上層部からの指示で捜査は中断を余儀なくされます。それでも密かに捜査を続ける石神のもとに、遺体の身元を知らせる密告電話が入ります。女性は、地元の大手ゼネコンである汐灘建設の東京支社に勤務していたことが判明します。そして、汐灘建設は現在、剱持一郎が社長を務める会社だったのです。

一方、剱持の後継問題にも新たな壁が立ちはだかります。現職の県知事が剱持に対抗して立候補を表明し、また別の代議士も県議を擁立しようと画策していることが明らかになります。様々な思惑が絡み合い、物語はさらに複雑に展開していきます。

物語の舞台

物語の舞台は、海に面した汐灘県です。県庁所在地は「汐灘市」で、上野駅まで急行で1時間ほどの距離に位置する都市です。バブル時代には、東京駅と汐灘駅を直結する新線の建設が計画されましたが、周辺住民の反対や、トンネルが通る予定の市南部の山にオオタカが生息していることから環境悪化を懸念する声が強く、計画は暗礁に乗り上げています。この架空の街「汐灘」は、作者の出身地である茨城県水戸市をモデルにしたとも言われていますが、あくまでフィクションです。物語を通じて、低成長時代の日本の地方都市の状況が象徴的に描かれています。

登場人物

主要人物

剱持 隆太郎（けんもち りゅうたろう）：与党・民自党の代議士。当選10回を誇り、党幹事長や運輸大臣も経験した大物です。70歳。
剱持 一郎（けんもち いちろう）：隆太郎の長男で、汐灘建設の社長。父の地盤を継ぎ、新線計画を推進するために、理工学部を卒業後、私鉄に就職しています。
石神 謙（いしがみ けん）：県警本部捜査一課の刑事。毎夜寝る前に世界の歴史に関する本を読むのが日課です。
坂東（ばんどう）：汐灘署捜査一課の刑事。石神とコンビを組みます。

剱持側の人物

剱持 和恵（けんもち かずえ）：一郎の妻。意志の強い性格です。
豊田（とよだ）：和恵の父で、隆太郎の後援会会長。豊長建設の社長です。
椎名 元次（しいな もとつぐ）：隆太郎の地元秘書。隆太郎が初当選したときから共に戦ってきた側近です。
高畠 修平（たかはた しゅうへい）：剱持の公設第二秘書。元証券マンで、次回の統一地方選で県議選に出馬予定です。

警察関係者

梅田（うめだ）：県警本部捜査一課の係長。石神の直属の上司で、「事件の神様に嫌われた男」という異名を持ちます。
赤松（あかまつ）：汐灘署捜査一課長。石神とは旧知の仲です。
伊達 明人（だて あきひと）：上園署の刑事で、石神の同期。前作『長き雨の烙印』の主人公です。

その他

石神 創（いしがみ そう）：謙の父親。隆太郎とは同い年で、何でも話せる間柄です。
花輪 一三（はなわ かずみ）：現職の県知事。剱持を苛立たせる人物です。
北川（きたがわ）：県連会長。高畠のおじで、剱持が面倒を見てきた人物です。
上野 勝久（うえの かつひさ）：野党第一党の代議士。剱持とは同期ですが、別々の道を歩んでいます。
梶川 清太郎（かじかわ せいたろう）：民自党の代議士で、「選挙の神様」を自称する選対役員です。
君島 太陽（きみしま たいよう）：北川の地元秘書を務めた後、県議になった人物です。
相澤 沙希（あいざわ さき）：汐灘建設東京支社に勤務していた女性。物語の鍵を握ります。
杉浦（すぎうら）：汐灘日報東京支社長。剱持の口利きで新聞社に就職しました。
竹原（たけはら）：10年前に贈収賄事件で辞職した元知事。
工藤 愛子（くどう あいこ）：汐灘建設東京支社員。相澤沙希と仲が良かった人物です。

テレビドラマ

2009年10月3日には、テレビ朝日系列でテレビドラマ化されました。松平健が剱持隆太郎役、西島秀俊が石神謙役を演じました。

キャスト

剱持隆太郎：松平健
石神謙：西島秀俊
高畠広樹：津田寛治
相澤沙希：星野真里
剱持和恵：櫻井淳子
石神登紀子：仁科亜季子
剱持一郎：黄川田将也
坂東智也：柏原収史
杉浦孝道：松澤一之
君島勝：飯田基祐
工藤愛子：小松彩夏
白川毅：石倉英彦
料亭「文楽」の女将：高柳葉子
梅田建彦：渡辺いっけい
花輪敏明：原田大二郎
北川勇作：佐藤B作
椎名正嗣：本田博太郎
豊田慎之介：石橋蓮司
石神創：長塚京三

スタッフ

監督：梶間俊一
脚本：岩下悠子
音楽：栗山和樹
プロデューサー：岩崎浩（テレビ朝日）、高野照子（東映）
チーフプロデューサー：田中芳之（テレビ朝日）、加藤貢（東映）
制作：テレビ朝日、東映

関連作品

長き雨の烙印：同じく「汐灘」を舞台とした堂場瞬一の小説。

関連項目

世襲政治家
犯人蔵匿及び証拠隠滅の罪
幇助（従犯）

外部リンク

* テレビ朝日公式サイト

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