新トムとジェリー

新トムとジェリー：仲良しトムとジェリーが織りなす、心温まるアニメーションの世界

1975年、アニメ史に新たな1ページを刻む作品が誕生しました。ハンナ・バーベラ・プロダクションとMGMテレビジョンが共同で制作した『新トムとジェリー』（原題：The New Tom and Jerry Show）です。従来のトムとジェリー像を覆す、優しく穏やかな世界観が特徴的なこのアニメは、多くの視聴者の心を掴みました。

印象的なオープニングとテーマソング

作品は、バーベルを持ち上げたトムが地面にめり込むなど、コミカルで印象的なオープニングアニメーションから始まります。これは、過去の短編映画版からのオマージュと言えるでしょう。軽快で覚えやすいテーマソングは、『チキチキマシン猛レース』などの音楽を手掛けたホイト・カーティン作曲、ウィリアム・ハンナとジョーゼフ・バーベラによる歌詞という豪華な布陣。エンディングでは、インストゥルメンタルバージョンが流れ、余韻を残します。

仲良しトムとジェリー：暴力規制と新たな試み

従来の『トムとジェリー』シリーズでは、トムとジェリーはお互いをいたずらで苦しめる、激しい追いかけっこが展開されてきました。しかし、このテレビアニメ版では、トムとジェリーは喧嘩をしません。仲睦まじく過ごす姿が描かれ、スポーツ競技などで健全な競争心を燃やすという設定です。これは、テレビアニメーションという媒体における暴力規制への配慮から生まれた、制作側の英断だったと言えるでしょう。作中では、動物虐待を暗示するようなセリフも登場し、制作陣の意識の高さがうかがえます。ジェリーは蝶ネクタイを着用しており、可愛らしさも加わっています。

日本での放映と日本語吹き替え

1970年代後半には、日本でもNET（現：テレビ朝日）系列で放映され、大きな人気を博しました。関西地区ではABC（朝日放送）で放送され、英語版の主題歌がそのまま使用されたことも話題となりました。放映時期によっては、二ヶ国語放送やモノラル放送も行われました。トムとジェリー自身はセリフがなく、サブキャラクターが物語を語るという形式も、独特の雰囲気を醸し出しています。また、本作品では、MGMテレビジョンが配給を担当しました。

TBS版とは異なり、他のアニメーション作品が本編中に挿入されるという構成も特徴的です。テックス・アヴェリーやハーマン＝アイジングといった巨匠たちの作品が数多く放映され、作品全体のボリューム感を高めています。新聞の番組欄では、「トムとジェリー」や「ニュートムとジェリー」とシンプルに表記されることもありました。

日本語吹き替えでは、西尾徳さん、山下啓介さんなど、ベテラン声優陣が脇役を演じ、作品に深みを与えています。

多彩なエピソード：冒険と笑いの詰まった物語の数々

『新トムとジェリー』は、多種多様なエピソードで構成されています。宇宙冒険、魔法、スポーツ、そしてコミカルな日常劇など、様々なシチュエーションが展開されます。個々のエピソードのタイトルを挙げると、

意地悪されてマス (Tricky McTrout)
宇宙怪人キャット (Cosmic Cat And Meteor Mouse)
魔法のつえ (The Sorcerer's Apprentices)
正義の味方 (The Supercape Caper)
ジキャル博士とハイドー氏 (See Dr. Jackal And Hide!)
蚊にねらわれてあかん (The Campout Cutup)
マンモス君のお散歩 (Mammoth Manhunt)
鬼代官の赤い羽根 (Robin Ho Ho)
海賊船長はこわいぞ (No Way, Stowaways)
トムのサーカスの大スター (Stay Awake Or Else...)
消えた恐竜の骨 (No Bones About It)
猫は猫でもこの猫は (Beach Bully)
金庫を運ぶ方法 (Safe But Not Sorry)
ボウリング必勝法 (The Super Bowler)
お化けを化かせ (Castle Wiz)
空飛ぶ魔女 (The Flying Sorceress)
かわいい子猫ちゃん (The Kitten Sitters)
大食い宇宙人 (Planet Pest)
迷獣医はおおいそがし (The Hypochondriac Lion)
ワシの赤ちゃん (The Egg And Tom And Jerry)
猛烈ガードマン (Watch Out, Watch Dog)
婦人警官はすばらしい (The Police Kitten)
だましあい (The Outfoxed Fox)
はるかなり南の国 (The Lost Duckling)
トムとジェリーと豆の木 (Beanstalk Buddies)
モグラの庭師 (Son Of Gopher Broke)
シンデレラ物語 (Chickenrella)
お守りはコリゴリ (Jerry's Nephew)
リスのおうち (Triple Trouble)
夢のハワイへ (Cruise Kitty)
太りすぎたアリ (It's No Picnic)
世紀の大レース (The Great Motorboat Race)
テニスチャンピオン (The Tennis Menace)
幻の鳥 (Hold That Pose)
犬の惑星 (Planet Of The Dogs)
世紀のデスマッチ (The Wacky World Of Sports)
スキーは楽しいな (The Ski Bunny)
謎の金鉱 (An Ill Wind)
モグラ騒動 (Gopher Broke)
強い熊の赤ちゃん (Grim And Bear It)
白蟻軍団大作戦 (Termites Plus Two)
大空の闘い (Give 'Em The Air)
世紀の対決 (The Super Cyclists)
お散歩相手 (Towering Fiasco)
スタントマンは命がけ (Two Stars Are Born)
いたずらカラス (Double Trouble Crow)
トムの闘牛士 (The Bull Fighters)
なぞの巨人 (Big Feet)
など、多岐に渡ります。

さらに、本編には、ルドルフ・アイジング、ヒュー・ハーマン、テックス・アヴェリーといった、アニメーション史に名を残す巨匠たちの作品も挿入されています。これらの作品は、本編とは異なる魅力を持ち、視聴者に多様なアニメーションの世界観を提供しています。

『新トムとジェリー』は、単なるトムとジェリーのアニメーションにとどまらず、様々な要素が融合した、まさに「新時代」を感じさせる作品と言えるでしょう。

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