新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論

新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論

『新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』は、漫画家小林よしのりによる日本の代表的な漫画作品で、1995年9月から雑誌『SAPIO』（小学館）に連載された本作は、全3巻から構成されています。これまでの歴史観や戦争についての議論に大きな影響を与え、特に保守的な陣営での支持と一方で多数の批判を呼び起こしました。

概要

本書は大東亜戦争、いわゆる太平洋戦争を主なテーマに扱っており、戦争とは何か、国家とは何かといった根本的な問いを提示しています。作品の内容は、圧倒的な迫力と説得力を持って描かれ、多くの支持を集める一方で、上杉聰や宮台真司、宮崎哲弥、吉本隆明らを含むさまざまな見解から厳しい批判の対象ともなりました。

特に、ニューヨーク・タイムズ紙やル・モンド紙など海外のメディアからも「歴史の書き換え」として評価され、多様な意見が渦巻く中、小林自身がさまざまな歴史的なコンテキストに新たな視点を加えました。本作は、戦争を肯定的に語る部分とともに、歴史認識やその捉え方に対する挑戦を含んでいます。

書籍内容

第1巻

1998年に刊行された第1巻では、大東亜戦争の歴史について独自の視点で展開されており、日本における従軍慰安婦問題や南京大虐殺問題、さらには歴史教科書を巡る対立を背景に、戦争に対する日本人の認識の変化を考察しています。この巻では、小林は日本人の愛国心が戦前と戦後でどのように変わり、特に戦後の否定的な認識がどのように形成されたかを問いかけています。

著者は、愛国心のもとに国や家族を守るために戦った兵士の精神やアジア解放の理念を忘れてはならず、日本人が大東亜戦争に肯定的な認識を持つべきだと強調しています。特に、戦後に価値観が断絶したとしても、この基盤を再評価する必要があると強く訴えています。

第2巻

2001年に発行された第2巻は、アメリカ同時多発テロ事件の影響を強く受け、新しい国際的な視点からテロリズムを考える内容になっています。小林は、アルカイダのテロを驚きつつも国家の枠組みを守る必要性を説き、テロが生じる背景を無視してはいけないと警告しています。この巻は、戦争とそれに伴う倫理的な死角についての深い考察が特徴です。

第3巻

2003年に刊行された第3巻では、これまでの巻の総括を行い、戦争における理念や道義性の重要性を一層深く探求しています。この巻では大東亜戦争を肯定する視点や、イラク戦争に対するアメリカの行動への批判が織り込まれ、特攻隊員の精神的な価値に焦点を当てています。特攻精神についての考察とともに、特攻隊員に対する理解を示しながらも、その行動の問題点についても言及されています。

影響と評価

『戦争論』は、その内容が多くの読者に衝撃を与え、自衛隊に入隊する動機づけに繋がったとされる一方で、小林自身は本書が誤読される側面があったとも語っています。こうした背景も含めて、作品は今後の歴史認識や教育に対する影響を考える上で欠かせない資料となっています。日本の歴史に対する見解が集中的に議論される契機を与えた本書は、そのべき歴史観をめぐる重要なリファレンスとして位置づけられています。

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