新人民

新人民とは

新人民（しんじんみん）は、1975年から1979年までのクメール・ルージュ政権下のカンボジアにおいて、主にプノンペンなどの都市に住む市民を指す言葉です。この言葉は、同政権下での社会構造や人々の生活状況を理解するための重要な概念となっています。新人民は、農村部に長年住んでいた旧人民（オールドピープル）と明確に区別され、社会の中で異なる立場にありました。

旧人民との対比

旧人民とは、クメール・ルージュ政権が成立する以前から農村部に住んでいた人々を指します。彼らは多くが村人や農民であり、教育を受けていない者が多かったため、政権の方針によって優遇されることになりました。この背景により、旧人民は「解放区」に住む者として、クメール・ルージュによる原始共産主義の実践者に位置付けられました。

一方で、新人民は都市部に住んでいたため、クメール・ルージュにとっては「敵の領地」にいる者と見なされました。このカテゴリーには元クメール国民軍の兵士や警察、商人、資本家、ビジネスマンなどが含まれ、彼らは戦争前からの恩恵を享受していると嫉妬の対象となりました。さらに、知識人や医者、法律家、僧侶、教師、公務員といった職業の人々も、クメール・ルージュが敵視する「悪魔の西洋文明」に影響されていると見なされ、迫害されました。

厳しい環境

新人民はクメール・ルージュによる厳しい弾圧と強制労働にさらされました。彼らは、人間らしい生活を送ることが許されず、財産も奪われる中で、極端な状況に放り込まれました。強制労働は一日10時間以上に及び、食糧の配分はごくわずかで、常に飢餓にあえぎながら生活せざるを得ませんでした。さらに、彼らは旧人民による差別や不平等に苦しみ、1976年には伝染病が流行し、カンボジアの人口の80%がマラリアにかかるという悲劇的な状況が続きました。

新人民が農作物を自由に摂取することは許されず、もし盗むような行為があれば厳しい罰が与えられました。これには村の広場で指を切り落とされる、または地雷の埋まった畑での強制労働が含まれていました。さらには、政治的な言動に反応して再教育キャンプに連行されることも一般的でした。このような場所から戻ってこれた者はほとんどいなかったため、多くの人々が恐怖に怯える日々を送っていました。

クメール・ルージュのモットー

クメール・ルージュが新人民に対して掲げたモットーは、「オンカー（政権）にとって新人民を保持することは利益にならないが、彼らを滅ぼすことは損失にもならない」というものでした。これは、新人民に対する冷酷な態度を明確に示しており、彼らの運命がどれほど悲劇的であったかを物語っています。

新人民の経験は、カンボジアの歴史において重要な教訓を持つものであり、その痛ましい過去を忘れずに語り継いでいくことが求められます。

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