新勅撰和歌集

新勅撰和歌集について

『新勅撰和歌集』は、平安時代の和歌の伝統を引き継いだ十三代集の最初の一つであり、通算で第9番目の勅撰和歌集です。全国の歌人による和歌が集められ、特に13世紀初頭に藤原定家の手によって体系的に撰出されました。全20巻から成り、その仮名序は藤原定家によるものとして広く知られています。

和歌集の撰集は、貞永元年（1232年）の6月13日、当時の天皇である後堀河天皇の命によって始まりました。定家が単独で作業を進めていましたが、後堀河天皇の譲位が決定したため、重要な歌や目録は10月2日に奏覧され、そのまま後に続く編纂作業の大義名分として扱われました。天皇が譲位した後、定家は一旦草案を焼却し、プロジェクトを終わらせようとしましたが、九条道家およびその子息によってプロジェクトは継続され、文暦2年（1235年）3月12日に正式に完成しました。

この歌集は特に藤原定家が選定した作品が多く含まれていますが、彼の選ぶ歌の中には処罰を受けた後鳥羽院やその関連者の作品もあり、これらは後に削除されました。歌集には合計1370首強の作品が収められており、部立は四季やテーマごとに整理されています。具体的には、春（上下）、夏、秋（上下）、冬、賀、羇旅、神祇、釈教、恋（1-5）、雑（1-5）という形で分けられていますが、従来の和歌集と比べるとその構成は単純化されています。

入集した歌人の中で最も多く歌を残しているのは藤原家隆の43首であり、次いで九条良経の36首、藤原俊成の35首、西園寺公経の30首などが続きます。このように、特に九条家や西園寺家に属する歌人の作品が多く含まれ、定家自身もこれらの貴族からの庇護を受けていたことが窺えます。

別名「宇治河集」として呼ばれることもあり、これは序詞「もののふの八十氏河」に由来します。この名称は武士を意味し、武家の歌を多く集めながらも、当時の政治的圧力から後鳥羽院や順徳院の作品を排除した点に対する批判が込められています。

歌のスタイルは、華やかな「新古今和歌集」とは異なり、より平明で温雅な趣を持っているとされます。このため、『新古今和歌集』を「花」とし、『新勅撰和歌集』を「実」と評して、両者が相互に補完する存在と見なされることもあります。特に中世の和歌の流派である二条派においては、『新勅撰和歌集』の藤原定家の和歌が手本とされ、多くの後世の歌人に影響を与えました。

また、この歌集はその後も様々な校注や注釈が行われ、1961年の岩波文庫版や2005年の和歌文学大系6などとして再発行されています。これにより、和歌の研究や教育において重要な役割を果たし続けています。

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