新大久保駅乗客転落事故

新大久保駅乗客転落事故

2001年1月26日午後7時14分頃、JR山手線新大久保駅で発生した痛ましい事故です。泥酔した男性がホームから線路に転落し、それを救助しようとした日本人カメラマンと韓国人留学生が、進入してきた列車にはねられ、3人全員が即死するという悲劇に見舞われました。

この事故は、人命救助のために自らの命を顧みなかった二人の勇気ある行動として、日韓両国で大きく報道されました。新大久保駅には、事故の経緯を日本語と韓国語で記した追悼・顕彰プレートが設置され、二人の犠牲者を偲んでいます。救助を試みた二人の遺族には、内閣総理大臣からの書状や警察庁からの警察協力章が授与されました。また、事故の翌年には、天皇（現上皇）が韓国人留学生の両親を皇居に招待し、慰労しました。

しかし、事故で亡くなったカメラマンの母親は、国や市からの表彰に対し、「そっとしておいてほしい」と複雑な心境を吐露し、事故から数年後には孤独死するという悲しい出来事も起こりました。一方、韓国人留学生の父親は、後に奨学金財団を設立し、アジア出身の学生を支援し、その功績が認められ、2015年には日本国政府から旭日双光章が贈られています。2019年に父親が亡くなった際には、外務大臣が弔意を表し、その遺志を継ぐことを誓いました。また、2019年には、韓国の首相が新大久保駅を訪問し、追悼プレートに献花を行っています。

事故後の対策

この事故を契機に、国土交通省は全国の鉄道事業者に対し、列車の速度が高く、かつ本数の多い駅での安全対策を指導しました。具体的には、「駅ホーム上に列車非常停止ボタンを設置、または転落検知マットを整備する」こと、そして「プラットホーム床下に退避スペースを確保する」ことが義務付けられました。これにより、2006年度末までに約1,700駅に列車非常停止ボタンが設置され、新大久保駅でも事故発生後、直ちにホーム下に避難スペースを設ける工事が行われました。さらに、2013年には、当駅にホームドアが設置され、転落事故防止の強化が図られました。

この事故を題材とした作品

この事故は、多くの人々に深い影響を与え、様々な形で語り継がれています。

『あなたを忘れない』(2007年): この事故を題材にした映画。
『横道世之介』(2009年): 吉田修一の小説で、主人公のモデルは、この事故で亡くなった日本人カメラマンです。
「STEP! 〜李秀賢（イ・スヒョン）26年の生涯に捧ぐ〜」: 安全地帯の楽曲で、アルバムに収録されています。韓国人留学生のイ・スヒョン氏に捧げられた曲です。
『かけはし』(2017年): この事故に関するドキュメンタリー映画。
* 『映像の世紀 バタフライエフェクト』(2023年): ドキュメンタリー番組で、本事故が紹介されました。

新大久保駅乗客転落事故は、鉄道における安全対策の重要性を改めて認識させるとともに、人命救助における勇気と犠牲を物語る出来事として、歴史に刻まれています。

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