新宣陽門院

新宣陽門院（しんせんようもんいん）

新宣陽門院は、南北朝時代に活躍した南朝の皇族、女院及び歌人で、彼女の名前は詩歌においても高く評価されています。院号を授与される前は、一品宮また一品内親王として知られていました。その家系に関する情報は多く、近世には後村上天皇の第一皇女である憲子内親王の子とされていましたが、これを裏付ける史料は未だ存在しません。20世紀後半には、後醍醐天皇と阿野廉子の間に生まれた皇女、特に末娘の惟子内親王であるという説が有力視されています。この場合、彼女は祥子内親王や後村上天皇の同母妹であることになります。

経歴について

彼女の活動は不明な点が多くありますが、正平14年（1359年）の6月には、阿野廉子の死を悼むために七七忌御願文を奉納したことが初めての記録です。翌月には、阿野廉子のために建立される墓のために、かつての収入源だった河内小高瀬庄を返付しました。また、同年の12月には紀伊吉田庄の領家職を和泉大雄寺に寄付しています。

『新葉和歌集』によると、1358年には後村上天皇を追悼する歌を贈ったことも記録されています。そして、1368年頃には正式に一品宮の称号を持っていたことが分かります。この時期、彼女は和歌を通じて皇族との交流を深めており、院号は長慶天皇によるものと推測されていますが、その背景は明らかではありません。

新宣陽門院は、観心寺を新待賢門院の護摩所と定めるなど、寺院への寄付も多く行い、1386年12月には同寺での寄進を文書に残しています。後の1389年に和泉御酢免朝用分の寄進も行っており、彼女の信仰心の強さを伺えます。

歌の活動

新宣陽門院は歌人としても著名であり、南朝の准勅撰和歌集『新葉和歌集』には彼女の詩が20首も収められています。彼女の和歌は、感情豊かでありながらも深い表現力を持ち、当時の他の歌人たちと同様に、彼女の作品も文学の中で高く評価されています。

惟子内親王説の考察

彼女の出自については多くの議論があります。従来の考え方では、大日本史が後村上天皇の皇女と考えたことからこの説が広がりましたが、観心寺への寄進実績を重視する見解も示されています。小木喬は、後醍醐天皇の末娘であり惟子内親王ではないかと考えており、これまでの研究に新しい視点を提供しています。所京子はこれをさらに進め、やはり惟子内親王の可能性が高いと主張しており、誕生年についても延元元年（1336年）またはその翌年である可能性を考慮しています。この説は、和歌の文脈でも検証されており、さらなる研究が期待されています。

新宣陽門院はその詩的才能と共に、当時の貴族社会に深く関わった人物として、今でも多くの人々の注目を集めています。

もう一度検索