新宮奇病

新宮奇病

新宮奇病（しんぐうきびょう）とは、1974年3月に福岡県糟屋郡新宮町で発生した水質汚濁に関する深刻な事件です。この出来事は、井戸水がアクリルアミドモノマーという有毒物質で汚染されたことが原因で、住民が中毒症状を示し、健康被害を受けました。

事件の経緯

この事件は、近隣で行われていた土木工事において、アクリルアミドモノマーを含む凝固剤が使用されたことから始まりました。工事で使用されたこの物質が井戸水に混入し、その水を飲んだ住民は神経症状を引き起こすこととなりました。具体的には一家5人が影響を受け、幻覚や麻痺、運動失調、そして月経不順といった症状が現れました。

症状は非常に激しく、住民の中には「孫悟空が飛んでいる」といった幻覚を体験したり、最近の生活の中で見慣れたたばこの煙から「火事だ!」と驚き、行動に影響が出るほどでした。一家全員が次々と倒れ、病院に入院することになる事態が続きました。特に、当時40歳だった女性は月経が止まり、麻痺の回復には半年以上を要しました。

社会的影響

新宮奇病によるこれらの健康被害は、大きな社会的反響を呼びました。多くのメディアに取り上げられ、その結果としてアクリルアミドモノマーの規制が大幅に強化される運びとなりました。この事件は、環境汚染が人々の健康に与える影響を改めて考え直させる重要な契機となりました。

その後の状況

新宮奇病を受けて、アクリルアミドモノマーの使用に関する規制が厳格化されましたが、アクリルアミドポリマーは現在も一部の凝固剤として利用されています。これに関する問題は依然として存在し、2019年には日本軽金属の関連会社がアクリルアミドポリマーを含む凝固剤を使用後に汚染汚泥を不法に投棄していたことがニュースになりました。この事実は、汚染が環境や漁業、特にサクラエビの不漁にも関連しているとの指摘を受けました。

結論

新宮奇病は環境問題に対する意識を高める要因となり、今後も水質汚濁の問題を軽視することはできないという教訓を与えています。公害や水質汚染に対する対策を強化し、地域社会の安全を守るための取り組みを続けることが求められています。

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