新宮馬之助

新宮馬之助

新宮馬之助（しんぐう うまのすけ）は、天保7年（1836年）に生を受け、明治19年（1886年）に生涯を閉じた、幕末から明治初期にかけて活躍した日本の武士、特に土佐藩出身の志士であり、坂本龍馬が組織した海援隊の主要な隊士として知られています。別名としては、寺内信左衛門（てらうち しんざえもん）を名乗った時期もあります。

経歴

彼の歩みは、まず故郷である高知から始まります。嘉永6年（1853年）、彼は高知において、当時の開明的な思想家であり画家としても知られた河田小龍（かわだ しょうりゅう）の門を叩きました。河田塾では、単に学問だけでなく、絵画についても学び、教養を深めていきました。この塾には、後に同じく龍馬の協力者となる近藤長次郎（こんどう ちょうじろう）も在籍しており、二人はここで同門として机を並べました。

その後、馬之助は「焼継業（やきつぎぎょう）」、すなわち割れた陶磁器などを修復する技術の習得を目指し、江戸へと遊学（留学）します。異国の文化や技術が流入しつつあった当時の江戸は、先進的な知識や情報が集まる場所でした。この江戸での遊学中に、彼の人生の方向を決定づける重要な出会いが訪れます。旧知の坂本龍馬から誘いを受け、幕府の軍艦奉行であり、後に「海軍の父」とも称される勝海舟（かつ かいしゅう）に師事することになったのです。勝海舟の薫陶を受けたことで、馬之助は日本の未来における海軍力の重要性を深く認識し、以後、坂本龍馬と行動を共にすることが多くなりました。

勝海舟の私塾的な性格を持っていた神戸海軍操練所が設立されると、馬之助はここに入門し、航海術や西洋式の海軍知識を本格的に学び始めます。これは、閉鎖的な幕藩体制から脱却し、国際社会に対応できる国を築くためには、海軍力の強化が不可欠であるという彼らの信念に基づくものでした。

操練所閉鎖後、龍馬が長崎で結成した貿易会社兼政治結社である亀山社中（後に海援隊と改称）に、馬之助は設立当初から参加しました。彼は亀山社中／海援隊において、その中心的なメンバーとして活躍します。海援隊は、単なる商業活動に留まらず、薩摩藩と長州藩という幕府に敵対する両勢力の連携を模索するなど、政治的な役割も果たしていました。

特に、慶応2年（1866年）1月21日（旧暦）、京都の薩摩藩邸において、長州藩代表の桂小五郎（木戸孝允）と薩摩藩代表の西郷隆盛が歴史的な会見を行い、薩長同盟を締結する際には、坂本龍馬らと共に調停役の一人としてその場に同席したと伝えられています。これは、幕末の政治情勢における彼の貢献を示す重要な出来事でした。

海援隊解散後、明治維新を迎えると、新宮馬之助はその海軍に関する知識と経験を買われ、新政府の海軍に所属することになります。彼は浦賀（現在の神奈川県横須賀市の一部）に置かれた海兵団に入り、順調に昇進を重ね、最終的には海軍大尉という階級にまで達しました。これは、幕末の動乱期に培った彼の能力が、明治新政府においても高く評価されたことを示しています。

しかし、その波乱に富んだ生涯は比較的早く終わりを迎えます。明治19年（1886年）、彼は長崎市において病没しました。享年51でした。

関連作品

新宮馬之助は、現代においても幕末を題材とした様々なフィクション作品に登場することがあります。例えば、歴史シミュレーションゲームとして知られる『維新の嵐』（株式会社コーエー、1988年発売）などにも、その名前を見ることができます。

もう一度検索