新尾道駅

新尾道駅：山陽新幹線の小さな巨人？

広島県尾道市栗原町に位置する新尾道駅は、西日本旅客鉄道（JR西日本）山陽新幹線沿線にある駅です。周囲の自治体や地元住民の強い要望、そして多額の寄付金によって建設された、いわゆる請願駅として知られています。62億円という莫大な建設費は、全て地元の負担によって賄われました。

当初、山陽新幹線建設時には福山駅と広島駅間の駅設置が計画されており、新尾道駅案も有力視されていました。三原駅併設案に比べて用地取得が容易だったためです。しかし、三原市長の長尾正三氏の積極的な働きかけにより、三原駅周辺の用地取得に同意が得られ、結果として新幹線の駅は三原駅に設置されることになり、新尾道駅の計画は一旦凍結されました。

その後、地元住民らの粘り強い努力によって計画が復活し、現在の新尾道駅が誕生しました。しかし、その立地は特異です。隣接する三原駅まではわずか11km、福山駅までは17kmしか離れておらず、山陽新幹線の中でも最短の駅間距離を誇ります。これは、三原市と福山市という主要都市が近接しているという地理的要因によるものです。駅のホームからは、福山寄りの尾道トンネルと、三原寄りの備後トンネルの坑口が間近に見えます。

新尾道駅から三原駅までは約6分、福山駅までは約7分と、非常に短い時間で移動できます。三原・福山との間では特定特急料金が適用され、自由席利用者は割安な料金で乗車できます。

開業は1988年3月13日。当初は「ひかり」も停車していましたが、1997年11月29日には「こだま」のみの停車となり、その後、2008年3月15日と2009年3月14日に「ひかり」の停車本数が増加しました。しかし2012年3月17日以降、「ひかり」の停車は朝の上り2本のみとなっています。2023年2月にはみどりの窓口が閉鎖され、みどりの券売機プラスが導入されました。

駅構造は、相対式ホーム2面2線の高架駅で、上下線を通過する2線と、外側に位置する待避線（副本線）を有しています。改札口は1ヶ所のみ、エレベーターは業務用のみで、利用客は係員への申告が必要です。駅長が配置される直営駅で、自動券売機やみどりの券売機プラスも設置されています。

駅周辺には、レンタカー、コインロッカー、観光案内所、バスセンターなどが整備され、利便性の向上に努めています。しかし、利用客数は少なく、請願駅としての成功例とは言い難い現状です。そのため、「請願駅の失敗例」として批判されることも少なくありません。特に、在来線との接続がないこと、隣駅との距離が短いにもかかわらず利用客が少ない点が、批判の的となっています。他の都道府県と比較しても広島県の新幹線駅数は多く、その中で新尾道駅の建設基準は採算性、利用率、距離のいずれの点からも甘かったという批判も存在します。

また、維持費用の多くは尾道市の税金で賄われているため、地元住民からも「税金の無駄遣い」といった批判の声が上がっています。さらに、当初は賛同していた四国の近隣都市でも、西瀬戸自動車道の開通やフェリー・高速船の廃止により、当駅利用の必要性が薄れているという現状もあります。

これらの状況から、新尾道駅の存在意義は常に問われ続けており、今後の動向が注目されます。駅周辺には、尾道鉄道栗原駅跡地や、複数の団地、金融機関、そして尾道港や山陽自動車道へのアクセス道路などがあります。バス路線も充実しており、尾道市内の観光やビジネス拠点としての役割も担っています。しかし、利用客数の少なさと、その維持費用を巡る議論は、新尾道駅の将来を左右する大きな課題となっています。

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