新幹線500系電車900番台

新幹線500系900番台電車の概要

新幹線500系900番台電車（WIN350）は、西日本旅客鉄道（JR西日本）が1992年に開発し、最高速度350 km/hでの営業運転を可能にするためのデータ収集を目的に運用された6両編成の高速試験電車です。この車両は新幹線500系電車の原型となった試作車であり、外観や構造は量産車とは異なる特徴があります。

開発の背景

JR西日本が所管する山陽新幹線は、東海道新幹線に比べて列車のシェアが低く、航空路線に勝つためには列車の速度向上が不可避でした。この状況を受けて、1990年に新幹線高速化プロジェクトが立ち上がり、技術検証のために新幹線500系900番台が製造されました。目標とした速度は350 km/hで、実車を用いた技術検証が行われました。

形式称号と番台区分の意義

この車両は、将来的に量産車の500系が導入されることを見込んで製造されました。そのため、500系900番台と位置づけられていますが、純粋な試験車両ではなく、外見や構造が大きく異なるため、量産車登場後に試作車としての形式番号900番台として唯一の存在となっています。また、一般的な試験車両は営業運転に使用されることが多いですが、この車両は営業運転を前提とせず、試験が終了すると廃車にされました。

設計方針と特徴

WIN350は将来の16両編成運転時に想定される技術的問題点の検証が可能なように設計されています。その結果、6両編成が選ばれ、環境への配慮も重要視されました。開発は、未解明な技術を排除し、既存の技術を基に進められる一方で、高速車両のための新技術も追求されました。

この電車にはアルミニウム合金を用いた軽量化のためのハニカム構造が採用されており、騒音が発生しやすい窓や扉の段差も調査されています。先頭部のデザインは異なる形状が採用され、比較検討が可能です。最大速度350 km/hに対応した設計がなされており、実際に1994年の試験で大きな成果を上げました。

車両の詳細と試験経過

WIN350は、ある種の主変換装置や補助電源装置を搭載し、量産車の技術を基盤とした機器配置が特徴です。試験は1992年4月に始まり、高速走行が可能であることが確認されました。その後も、騒音測定やアクティブサスペンションの試験が行われ、様々な技術が試されました。

特に、騒音低減のためのデザインや集電装置周囲の騒音対策が重要な課題としてあげられ、最終的には量産車の最高速度を320 km/hに変更する決定が下されました。これらの技術的試験は、その後の新幹線車両の開発に大きな影響を与えました。

運用終了と保存

1995年にこの電車の試験が終了し、1996年には最後の運用が行われました。その後、両先頭車両は特定の施設に保存され、イベント時には一般公開されていますが、他の車両のほとんどは解体されました。WIN350は、新幹線のさらなる発展に寄与した重要な試作車両としての役割を果たしました。特に、高速運転関連の技術が進化し、後の新しい新幹線車両の設計に影響を与えていることが評価されています。

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