新日和見主義事件

新日和見主義事件の概要

新日和見主義事件は1970年代初頭、日本共産党の内部で起こった重要な事件であり、党内の意見対立が激化した一因です。当時、広谷俊二や川上徹といった党員が、公式の党の方針に反対し、秘密裏に分派を形成しました。この行動は、党の規約に反するものであり、1972年5月には党中央によって摘発され、その結果、約100名の党員が処分を受けることとなりました。

詳細な経緯

この事件は、1972年5月から9月にかけて展開されました。当時の共産党は、民主青年同盟や全日本学生自治会総連合（全学連）、労働者教育協会等の約600名の党員に対し、「査問」と称される取り調べを行いました。査問における「罪状」は、脱党の孤立行動から金銭の横領疑惑まで多岐にわたり、党支持者たちに大きな動揺を与えました。

233参加者の中には、党の批判を受け入れ、「自己批判文」を提出する者も多く、また自分たちの容疑を否定した者は長期間にわたり拘留されるという人権侵害が発生しました。特に、拘束中の彼らは監視下に置かれ、実質的に軟禁状態にされたため、この事件は日本共産党の組織内での権力行使に関する批判が高まりました。

事件の展開とその影響

事件の中心となった川上徹は、査問において党の方針に疑問を抱き、分派的会合を持っていたことを自白しました。彼は後に著書『素描・1960年代』を通じて、事件の真相を明らかにし、当時の著作でも民主的かつ市民的な感情を訴えています。この事件は党内部での意見対立を浮き彫りにしましたが、その結果、ほとんどの査問対象者は、党を離党することなく、現場の一党員として再出発を余儀なくされました。

さらに、事件後の1974年には公安警察のスパイが民青中央常任委員として潜入し、党の分派摘発を促進したことも明らかになりました。このようなスパイ行為は、党の内部組織としての団結をさらに脅かし、事件の影響は長期にわたりました。

後の発展とPubliсation

新日和見主義事件は、時間が経つにつれて何度も再評価され、1980年代には「市民派」との関係が問われる際に過去の事例として取り上げられることもありました。特に1997年、川上徹による著書『査問』の発表が大きな反響を呼びました。これに対し、日本共産党は反論文を発表し、事件の実態が公の場で争点となりました。

その後も事件に関する著作が続々と出版され、例えば油井喜夫が『汚名』などで自身の経験を取り上げ疑問を投げかけました。新日和見主義分派については、党が行った査問の実態が非難され、共産党の体質が問われることとなります。

結論

新日和見主義事件は日本共産党の内部における重要な事件であり、党内の意見対立、権力の行使、人権侵害といった問題が浮き彫りになりました。事件を背景に、その後の政治的動向や党の体質に関する議論が続いており、今なお日本共産党に対する評価に影響を与え続けています。

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