新昌郡

新昌郡は、中国の魏晋南北朝時代に異なる場所に二つ存在し、時期によっては並立していました。それぞれの郡の歴史を詳しく見ていきましょう。

交州の新昌郡

271年（呉の建衡3年）、三国時代の呉によって交阯郡が分割され、新昌郡が設置されました。この新昌郡は現在の中国とベトナムの国境地帯に位置し、交州に属していました。

晋の時代には、新昌郡は麊泠（べきれい）、嘉寧（かねい）、呉定（ごてい）、封山（ふうざん）、西道（せいどう）の6県を管轄していました。これらの県は、新昌郡の行政的な範囲を構成していました。

南朝斉の時代になると、新昌郡の管轄下にある県は拡大し、范信（はんしん）、嘉寧、封山、西道、臨西（りんせい）、呉定、新道（しんどう）、晋化（しんか）の8県を管轄するようになりました。この変化は、地域の政治的な再編や人口増加などを反映していると考えられます。

589年（隋の開皇9年）、隋が南朝陳を滅ぼすと、新昌郡は廃止され、興州に編入されました。これにより、交州における新昌郡の歴史は幕を閉じました。

滁州の新昌郡

473年（宋の元徽元年）、南朝宋により秦郡の頓丘県、梁郡の穀熟県、歴陽郡の酇県を分割して、新たに新昌郡が立てられました。この新昌郡は現在の安徽省滁州市一帯に相当し、当初は徐州に属していました。

南朝斉の時代には、新昌郡は北徐州に属し、頓丘（とんきゅう）、穀熟（こくじゅく）、尉氏（いし）の3県を管轄していました。これらの県は、新昌郡の経済や文化を支える重要な地域でした。

南朝梁の時代になると、新昌郡は西徐州に転属しました。所属する州が変わることは、その地域の政治的な重要性や戦略的な価値の変化を示唆しています。

東魏の時代には、新昌郡は譙州（しょうしゅう）に転属し、赤湖（せきこ）、荻港（てきこう）、薄陽（はくよう）、頓丘の4県を管轄していました。この時期には、管轄する県にも変動が見られました。

552年（北斉の天保3年）、北斉により南譙州が立てられると、新昌郡に州治が置かれました。これは、新昌郡が地域における政治の中心地としての役割を担うようになったことを意味します。

583年（隋の開皇3年）、隋が郡制を廃止すると、新昌郡は廃止され、滁州に編入されました。これにより、滁州における新昌郡の歴史も終わりを迎えました。

このように、新昌郡は二つの異なる場所で成立し、それぞれの歴史を歩みました。それぞれの郡の盛衰は、当時の政治情勢や社会状況を反映しており、中国史の研究において重要な意味を持っています。

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