新札幌副都心

新札幌副都心は、北海道札幌市厚別区に位置する重要な都市機能集積エリアであり、札幌市の「副都心計画」に基づき段階的に開発が進められてきた街です。

計画と発展の経緯

新札幌という名称は、1973年（昭和48年）に開業した当時の日本国有鉄道（現北海道旅客鉄道）新札幌駅の駅名として初めて用いられました。このエリアの開発は、1975年（昭和50年）から本格的に開始されました。

開発が検討された背景には、高度経済成長期における札幌市への急激な人口流入がありました。都心部では商業・業務機能の過度な集中による大気汚染や交通渋滞といった都市型公害が発生しており、一方、郊外では住宅地の無秩序な拡大に対してインフラ整備が追いつかないという課題を抱えていました。こうした状況に対し、札幌市は都市機能の一部を分散させる「多核分散型の都市形態」への転換を目指し、その拠点の一つとして新札幌駅周辺を副都心に位置づけました。

この土地はもともと、1944年（昭和19年）に開設された旧北海道陸軍兵器補給廠の附属弾薬庫が置かれていた場所で、戦後はアメリカ軍、陸上自衛隊を経て、1966年（昭和41年）に札幌市が取得しました。当初は大規模な団地造成が計画されていましたが、国鉄千歳線のルート変更により現在の場所に鉄道駅が建設されることが決定したため、駅を中心とした商業・業務機能を持つ副都心として開発方針が転換されました。

1972年（昭和47年）に策定された「厚別副都心開発基本計画」では、市民への質の高い都市サービスの提供、公共空間の創出、都市ビジネス機能の分担、交通ネットワークの整備、そして公害や災害に強い街づくりという五つの柱が開発の基本方針とされました。計画を推進するため、商業・業務施設の中核開発を担う第三セクターとして、1974年（昭和49年）に札幌副都心開発公社が設立されました。

施設の集積と発展

副都心開発の進展とともに、多様な施設が開業しました。1977年（昭和52年）にはサンピアザショッピングセンターとダイエー厚別店（現在のイオン新さっぽろ店）がオープンし、商業の中心が形成されました。1980年代に入ると、札幌市青少年科学館やサンピアザ水族館、体育館といった文化・スポーツ施設が開設され、エリアの魅力が高まりました。1982年（昭和57年）の札幌市営地下鉄東西線新さっぽろ駅開業は、札幌中心部とのアクセスを飛躍的に向上させました。駅周辺には地下専門店街「メトロモール」や百貨店「プランタン新さっぽろ（現在のカテプリ）」も誕生しました。

1990年代には、札幌社会保険総合病院（現在の地域医療機能推進機構札幌北辰病院）が移転新築し、駅北側には新札幌駅ターミナルビル（デュオ-1）がオープン。これに新札幌バスターミナルやホテルも併設され、交通結節点としての機能が強化されました。1992年（平成4年）には南側のデュオ-2も開業し、駅ビル群が全面開業を迎えました。その後も、公園や歩行者空間の再整備、JR・地下鉄・バス間の乗り継ぎを円滑にするバリアフリー化など、継続的なまちづくりが進められました。

近年の大規模再開発

2015年（平成27年）に策定された「新さっぽろ駅周辺まちづくり計画」に基づき、老朽化した市営住宅跡地を活用した大規模な再開発プロジェクトが進行しました。このプロジェクトはG・I街区開発として進められ、「マールク新さっぽろ」と名付けられたエリアに新たな都市機能が集積しました。2021年（令和3年）には札幌学院大学の新札幌キャンパスや札幌看護医療専門学校が開設され、教育機能が拡充。2022年（令和4年）には複数の病院（新さっぽろ脳神経外科病院、新札幌整形外科病院、交雄会新さっぽろ病院）が開業し、医療拠点としての役割も強化されました。そして、2023年（令和5年）には地上30階建てのタワーマンション「プレミストタワー新さっぽろ」やホテル「ラ･ジェント･ステイ新さっぽろ」、複合商業施設「BiVi新さっぽろ」が開業し、居住・宿泊・商業機能がさらに充実しました。

交通と都市機能

新札幌副都心は、交通の要衝としての機能が極めて重要です。JR千歳線新札幌駅、札幌市営地下鉄東西線新さっぽろ駅、そして大規模な新札幌バスターミナルが集結し、鉄道、地下鉄、バス路線の相互乗り換えが可能です。加えて、国道12号、南郷通、国道274号（札幌新道）といった幹線道路や、道央自動車道の大谷地IC・札幌南ICへのアクセスも良好であり、札幌市中心部のみならず、近隣の江別市、北広島市、さらに北海道各地への広域交通ネットワークの拠点となっています。

エリア内には、厚別区役所、区民センター、図書館、消防署などの公共サービス施設、複数の医療機関、オフィスビル、そしてサンピアザ、デュオ、BiVi新さっぽろなどの大規模商業施設、ホテル、大学や専門学校といった教育機関が集積しており、職住学遊医の多様な機能が複合した、札幌市を支える重要な副都心としての役割を担っています。

もう一度検索