新潟県政記念館

新潟県新潟市中央区の一番堀通町に位置する新潟県政記念館は、明治時代に建設された旧新潟県会議事堂の建物を利用した博物館です。この建物は1883年（明治16年）3月に竣工し、その建築的・歴史的価値が認められ、1969年（昭和44年）に国の重要文化財に指定されました。現在も施設の所有・管理は新潟県が行っており、運営は指定管理者によって担われています。

現在の県政記念館となっている旧県会議事堂が建てられる以前は、県会の議場は新潟県庁舎内に置かれていました。しかし、1880年（明治13年）夏に発生した新潟大火によって県庁舎が焼失したため、その後の一時期、県会は新潟学校の建物を借りて開かれていました。こうした状況の中、当時の県令（現在の県知事に相当）であった永山盛輝が新たな県会議事堂の建設を強く提唱し、県会の賛同を得て計画が進められました。1882年（明治15年）5月に建設工事が開始され、翌1883年3月には無事完成を迎えています。

議事堂の設計は、当時大阪駅なども手がけた実績を持つ、新潟県西蒲原郡出身の大工棟梁、星野総四郎が担当しました。建物は木造2階建てで、屋根は桟瓦葺きです。正面玄関を配した中央棟の左右（南北）に、大きな切妻屋根を持つ棟を前面に張り出した構成となっており、屋上の中央には八角形の塔屋が載せられています。全体として、左右対称のバランスが取れた、明治期に流行した擬洋風建築の様式をよく表しています。建物の規模は、間口が両翼を含めて約43.7メートルです。奥行きは、向かって右側の北翼が約21.9メートル、左側の南翼が約14.6メートルと、左右で長さが異なります。北翼はかつて議場として使われており、2階部分は大きな吹き抜け空間となっていますが、壁沿いにはギャラリー（傍聴席）が設けられていました。このギャラリー部分は、1階の床から立ち上がる鋳鉄製の柱によって支えられています。一方、南翼は、1階が傍聴人のための控室、2階が議員の控室として利用されていました。中央棟の内部には、廊下に沿って知事室や議長室など、重要な部屋が配置されています。

建物の外観には、様々な装飾が施されています。建物の隅や窓枠を縁取る石材（地元産の間瀬石を使用）や、軒周りの垂れ下がる飾り、棟の両端にある擬宝珠（ぎぼし）形の妻飾り、破風板の曲線的な刳形（くりかた）などには、明治期の擬洋風建築に特有の意匠が見られます。また、小屋組にクイーンポストトラス構造を採用したり、窓に上げ下げ窓を用いるなど、当時の最先端であった西洋の建築技術や様式が積極的に取り入れられている点も、この建物の特徴です。

完成から約50年間にわたり、この建物は新潟県政の重要な舞台として機能してきましたが、1932年（昭和7年）に学校町通一番町地内に新築された県庁本庁舎（現在の新潟市役所本庁舎がある場所）へ議場が移転したため、議事堂としての役割を終えました。その後は、郷土資料館や県庁の分館などとして利用されていましたが、1969年（昭和44年）3月、府県会が設置された初期の議事堂建築としては国内で唯一現存する遺構であること、その歴史的な価値や建築様式の重要性が高く評価され、国の重要文化財に指定されることとなりました。

重要文化財指定後、建物は建設当初の姿に復原・修復工事が施され、1975年（昭和50年）4月に新潟県政記念館として一般に公開されるようになりました。以来、多くの人々がこの歴史的建造物を見学に訪れてきました。しかし、建物の耐震性を向上させるため、2022年（令和4年）12月から長期の休館に入っています。この改修工事では、建物を一部解体して構造的な補強を行うとともに、柱などの部材を塗り直すなど、建築当時の姿を再現する作業が進められています。現在のところ、工事は2028年（令和10年）3月に完了し、再び開館する予定です。

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