新生児特定集中治療室

新生児特定集中治療室（NICU）とは

新生児特定集中治療室（NICU：Neonatal Intensive Care Unit）は、早産児、低出生体重児、呼吸器疾患や先天性疾患などを持つハイリスクな新生児を24時間体制で集中的に治療・ケアする専門施設です。NICUは、特別な医療機器と専門スタッフによって、新生児の生命を維持し、健やかな成長をサポートする重要な役割を担っています。

NICUの役割

NICUの主な役割は以下の通りです。

生命維持: 呼吸管理、循環管理、体温管理など、新生児の生命を維持するための集中治療を行います。
合併症の予防と治療: 早産児や低出生体重児に起こりやすい合併症（呼吸窮迫症候群、感染症、脳室内出血など）を予防し、早期に治療します。
発達支援: 新生児の発達を促すためのケア（ポジショニング、触覚刺激、母乳育児支援など）を提供します。
家族支援: 新生児の家族に対して、疾患に関する情報提供や精神的なサポートを行います。

日本におけるNICUの現状

日本では、1970年代頃からNICUの導入が進み、新生児医療の進歩とともに新生児死亡率は劇的に低下しました。1970年には出生千対8.7だった新生児死亡率は、2019年には0.9まで減少しています。これは、NICUをはじめとする周産期医療体制の充実による成果と言えるでしょう。

厚生労働省は、NICUの施設基準を定めており、質の高い医療を提供するための様々な要件を設けています。例えば、常時医師が治療室内に勤務していること、当直医は他病棟との兼任でないこと、一床あたりの床面積が7平方メートル以上であること、自家発電装置を有していること、バイオクリーンルームであることなどが求められています。これらの基準を満たすことで、感染症のリスクを低減し、安全で安心な医療環境を提供しています。

NICUの歴史

NICUの概念は、19世紀半ばに遡ります。孵卵器をベースにした乳児用保育器が初めて開発され、未熟児の体温管理に役立てられました。フランスの医師ステファン・タルニエ博士は、パリの産科病棟で密閉式保育器を開発し、未熟児医療の基礎を築きました。彼は「保育器の生みの親」とも呼ばれています。

タルニエ博士の引退後、ピエール・ブダン博士は、保育器に入れられた乳児の限界を指摘し、母乳と母親の愛着の重要性を説きました。ブダン博士は現代周産期学の父として知られており、彼の著書「Le Nourisson」は、新生児ケアに関する最初の主要な出版物となりました。

NICUに関連する施設

継続保育室 (GCU): NICUでの治療を終えたものの、引き続き経過観察やケアが必要な新生児のための施設です。
周産期母子医療センター: NICUを含む、周産期医療に関わる高度な医療を提供する総合的な施設です。

まとめ

NICUは、早産児や低出生体重児など、特別なケアを必要とする新生児にとって、生命を繋ぐ希望の場所です。NICUの医療スタッフは、高度な知識と技術、そして温かい心で、新生児とその家族を支えています。

関連項目

新生児学
保育器
継続保育室(GCU)
周産期母子医療センター

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