新神秘主義

新神秘主義とは

新神秘主義（New Mysterianism）とは、心の哲学における意識の問題に関する立場の一つで、特に意識のハードプロブレム、すなわち物質的な脳からどのようにして主観的な心的世界が生まれるのかという問題は、人間の認知能力では理解も解決も不可能であるとする考え方です。簡単に言えば、「意識の謎は人には解けない」という悲観的な立場を指します。

名称の由来と背景

この用語は、コリン・マッギンに代表される一連の思想を指し、1991年にオーウェン・フラナガン（Owen Flanagan）の著作で初めて用いられました。「新」という言葉は、歴史的に意識の問題は解決不可能だと考えてきた人々（旧神秘主義者）と、現代の論客を区別するために付けられています。マッギン自身は、自身の立場を「超越論的自然主義（Transcendental naturalism）」と呼んでいます。

主張

新神秘主義は、心身問題、特に意識のハードプロブレムに関して、解決は不可能だと主張します。マッギンの1989年の論文「Can we solve the mind-body problem?（心身問題は解決できるのか？）」は、この立場を代表する有名な論文です。

批判

マッギンの悲観的な主張に対しては、「時期尚早である」という批判があります。意識に関する科学的研究はまだ始まったばかりであり、科学的に解明できる余地は多く残されています。そのような状況で結論を出すのは早すぎる、という意見です。

発展

マッギン自身は、「意識の問題」を「人類には解決不可能」と主張していますが、永遠に解決不可能と考えているわけではありません。例えば、人間とは異なる認知構造を持つ地球外知的生命体にとっては、意識の問題は自明なことであり、問題とすら認識されない可能性があります。また、人間が自明だと考えていることが、地球外知的生命体にとっては理解困難なことかもしれません。

また、マッギンは1993年の著作「Problems in philosophy」の中で、人間が自身の認知構造を操作し、ポストヒューマンへと進化すれば、これらの問題が解決可能になる可能性を示唆しています。

参考文献

McGinn, Colin (1989). “Can We Solve the Mind--Body Problem?”
C. マッギン 著、石川幹人・五十嵐靖博 訳『意識の＜神秘＞は解明できるか』青土社、2001年。
McGinn, Colin (1993). Problems in philosophy: The limits of inquiry. Malden: Blackwell.
Rowlands, Mark (2007) [1984]. “Mysterianism”. In Velmans, Max. and Schneider, Susan. The Blackwell Companion to Consciousness. Oxford: Blackwell.
Flanagan, Owen J. (1991) [1984]. The Science of the Mind. A Bradford Books (First MIT Press ed.). Cambridge: The MIT Press.

関連事項

認知的閉鎖
自然主義的二元論
不可知論
クオリア

外部リンク

Transcendental naturalism - ディクショナリー・オブ・フィロソフィー・オブ・マインド「超越論的自然主義」の項目。

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