新納時久

新納時久（にいろときひさ）は、南北朝時代に活躍した武将であり、新納氏の初代当主として知られています。彼は、島津氏4代当主・島津忠宗の四男として誕生しました。

1335年、建武2年に、時久は日向国児湯郡新納院の地頭に任命され、高城に入り、新納氏を名乗るようになりました。当時、後醍醐天皇と足利尊氏の間で争いが起こると、時久は本家である島津氏とともに尊氏方に属しました。

足利政権内部で尊氏とその弟・直義の間に確執が生まれると、時久は当初、尊氏の側についていました。しかし、領内の情勢を鑑みて、1349年（正平4年/貞和5年）には、時久は直義方に転じ、その功績により日向救仁院を賜りました。この時、彼は政治的な状況を敏感に察知し、自身の立場を有利に進めるための決断を下したと考えられます。

翌1350年（正平5年/貞和6年）には、直義方の日向守護であった畠山直顕による攻撃を受け、高城が陥落しました。これにより、時久は本拠地を日向救仁院に移さざるを得なくなりました。この出来事は、彼がただ一勢力に固執することなく、状況に応じて柔軟に対応していたことを示しています。

現在、志布志城跡の矢倉場には、新納時久の墓が残されています。この墓は、彼がこの地で重要な役割を果たした証であり、今なおその存在を伝えています。

このように、新納時久は激動の南北朝時代を生き抜き、新納氏の基礎を築いた武将でした。彼は、単に戦に明け暮れるだけでなく、政治的な駆け引きや領土経営にも長けていたことがうかがえます。その生涯は、当時の武士の生き様を示す一例として、歴史に深く刻まれています。

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