源義光

源義光：河内源氏の重鎮、甲斐源氏の祖

源義光(みなもとのよしみつ)は、[平安時代]]後期を代表する武将の一人です。河内源氏の棟梁、源頼義の三男として生まれ、数々の戦場を駆け巡り、甲斐源氏という新たな流れを築いた人物として知られています。兄には、後三年の役で名を馳せた源義家]と[源義綱]がいます。[[近江国の新羅明神(大津三井寺新羅善神堂)で元服したことから、「新羅三郎(しんらさぶろう)」の異名で呼ばれました。官職としては、左兵衛尉、刑部丞、常陸介、甲斐守、刑部少輔などを歴任しています。また、源頼義の弟である源頼季(信濃源氏の祖)や源頼清(信濃村上氏の祖)を叔父に持ち、錚々たる一族に属していました。

後三年の役と勢力拡大

左兵衛尉の位にあった頃、後三年の役において兄・義家が清原勢に苦戦しているとの報を受けます。義光は朝廷に東下を願い出ますが、許可を得られず、寛治元年(1087年)に無断で陸奥国へと向かいました。この行動により官職を剥奪されますが、義家と共に清原武衡・家衡と戦い、金沢柵の戦いで活躍しました。武衡が降伏を申し出た際、義光は自ら交渉に向かおうとしましたが、義家によって制止され、代わりに郎党の藤原季方が交渉にあたりました。しかし、義家は降伏を受け入れず、最終的に武衡・家衡は捕縛され、斬首されました。

戦後、義光は京に戻り、刑部丞に任ぜられ、その後常陸介、甲斐守を経て、刑部少輔、[従五位]]上へと昇進していきます。常陸国の有力豪族である常陸平氏]と婚姻関係を結び、その勢力を自らの基盤として強固なものにしていきました。新田氏の祖'>[嘉承]]元年(1106年)には、甥の源義国]と[[常陸国で争い、合戦にまで発展し、両者ともに勅勘を蒙りました。

義忠暗殺事件と疑惑

義家の後を継いだ三男・源義忠が天仁2年(1109年)に郎党に殺害されるという事件が発生します(源義忠暗殺事件)。当初は源重実が疑われましたが、後に義家の弟・義綱の子である義明とその乳母夫・藤原季方にも嫌疑が向けられ、彼らは白河上皇の命を受けた源重時によって殺害されました。この事件に激怒した義綱は東国へ逃亡しますが、白河上皇の命を受けた源光国と義忠の甥(弟とする説もある)為義によって追討され、甲賀山で降伏、佐渡国に流されました(義綱の子息は全員自害)。『尊卑分脈』は、この事件の黒幕として義光を挙げていますが、真相は不明なままです。義光が郎党の鹿島三郎に命じて義忠を暗殺させ、その後鹿島三郎が殺害されたという記述もありますが、確証はありません。この事件は、義家死後の河内源氏内部の対立が背景にあったと考えられています。

弓馬の達人、そして音楽家

義光は弓馬の術に優れ、音律にも精通していたと伝えられています。古武道の大東流合気柔術では開祖とされ、流鏑馬に代表される弓術、馬術、礼法の流派である小笠原流や武田流にもその影響が見られます。武田氏の嫡流に伝わった盾無鎧や、南部氏が伝えた菊一文字の鎧なども、義光の武家としての精神性を反映していると言えるでしょう。笙の名手としても知られ、豊原時忠から秘曲を学び、名器「交丸」を得た逸話も残されています。

子孫と影響

義光の子孫は、平賀氏、武田信義、加賀美遠光、安田義定など'>[武田氏]]、佐竹氏、小笠原氏、南部氏、簗瀬氏など、各地で在地武士として発展しました。本家の河内源氏に対しては、甲斐源氏]が一族内で分裂することなく頼朝軍に合流したため、一定の影響力を維持しました。しかし、その勢力の大きさから警戒され、[[武田信義の失脚や一条忠頼の暗殺など、抑圧や分裂策によって御家人化していきました。常陸源氏の佐竹氏は、平家と結びつき東関東に影響力を持つも、鎌倉幕府成立により所領を没収されるなど、波瀾万丈の道を歩みました。

縁の地と最期

義光の墓所は滋賀県大津市園城寺町、元服を行った新羅善神堂の裏手にあります。生誕地とされる大阪府羽曳野市の壷井八幡宮など、数多くの神社に義光は祀られています。大治2年(1127年)10月20日、死去しました。その生涯は、戦国の世を生き抜いた武将としての輝かしい功績と、謎に包まれた暗殺事件への関与という、相反する面を持つ複雑なものでした。彼の行動と影響は、現代にまで続く多くの流派や一族に受け継がれ、平安時代後期の歴史に深い足跡を残しています。

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