新聞統制

新聞統制とは

新聞統制とは、戦時下の日本において、新聞資本の統合と統制団体の設置を目的として行われた政策です。内務省と情報局が中心となり、1938年から1942年にかけて実施されました。この統制によって、各県に原則として一つの新聞社が存在する「一県一紙」体制が確立し、現在までその枠組みが残っています。

言論統制との関連

新聞統制は、国による言論統制の一環として行われました。言論統制には、検閲のような消極的なものと、新聞統合のような積極的なものがあります。検閲は報道内容を事前にチェックし、不都合な情報を削除するものでしたが、新聞統合は報道機関そのものを統制することで、より強力な情報操作を可能にするものでした。

戦争報道の影響

1930年代初頭、ロンドン軍縮条約を巡り、当初は軍部批判も活発でしたが、満州事変を契機に各新聞は軍部支持へと転換しました。満州事変では、各社がスクープ合戦を繰り広げ、ナショナリズムを煽る報道が展開されました。この結果、新聞各社の売り上げは増加しましたが、同時に報道は制約されるようになり、日本に有利な情報のみが掲載されるようになりました。従軍報道においても、写真や記事は厳しい検閲を受け、事実とは異なる内容も多く報じられました。

新聞統合の進捗

「一県一紙」とは、必ずしも一つの県に新聞が一社だけ存在するという意味ではありませんでした。全国紙（中央紙）と地方紙は併存しており、その他にも様々な新聞が存在しました。実際には、1937年に1208社あった日刊新聞社が、1942年には55社に統合されたことが、新聞統合の実態でした。日刊紙以外にも、週刊紙や不定期刊行の新聞も存在していました。

持ち分合同

太平洋戦争の激化に伴い、1945年には「持ち分合同」が実施されました。これは、全国紙（朝日・毎日・読売報知）の題字を地方紙に掲載し、共同で発行するというものでした。主要都市とその周辺地域では全国紙と地方紙が単独発行されましたが、それ以外の地域では、地方紙と全国紙の連名で発行されました。

新聞統制が遺したもの

新聞統制の結果、地方紙間の競争は少なくなり、全国紙と各県に一つ存在する地方紙という構図が確立しました。このため、関東・関西以外の地方紙は、ほぼ独占的なシェアを持つことになりました。戦後、新たな新聞社の設立が自由化されましたが、多くは既存の地方紙との競争に敗れ、経営が悪化しました。

一方で、「福島民友」のように復刊を果たした新聞や、「栃木新聞」、「山梨時事新聞」などの第二県紙的な存在となる新聞も現れました。しかし、都市部では全国紙や有力ブロック紙に発行部数を奪われる新聞社も多く、廃刊に追い込まれる例も少なくありませんでした。また、地方紙の中には、放送局に出資することでメディアグループを形成する動きも見られました。

戦後、ラジオ放送では「1県1波」の原則が採用され、地方紙と放送局との関係が深まりました。しかし、テレビ放送においては、全国紙やキー局との関連性が深い局が増加しました。地方紙が弱体化している県では、県域ラジオ放送が存在しない例もあります。また、地域・ローカル新聞社の設立も促されましたが、新聞業界の閉鎖性から、新規参入が難しい状況も生じました。

このように、新聞統制は日本の新聞業界に大きな影響を与え、その影響は現在まで続いています。

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