新興写真

新興写真について

新興写真（しんこうしゃしん）は、1930年代の日本において発展した写真表現運動であり、日本の写真史において重要な位置を占めています。この運動は、日本独自の試みというよりは、ドイツを中心とした国際的な潮流に連動して生まれたものであり、写真における新しい表現方法の探求が特徴です。

背景と影響

新興写真は、ドイツの「新即物主義」や「ノイエ・フォト」の影響を受けたもので、1930年前後にその流れが強まりました。この動きは、世界中に伝播し、各国の写真芸術に影響を与えました。特に、1929年にドイツで開催された「Film und Foto」展が、新興写真の火付け役とされています。この展覧会は、モホリ＝ナジによって構成され、当時の写真芸術を集めて新しい視点を提示しました。

続く1931年には、この展覧会の「写真部門」が日本の東京と大阪でも開催され、多くの反響を呼び起こしました。このような国際的な交流を通じ、写真の新たな可能性が日本のアーティストに広まりました。

新興写真の特徴

新興写真は、従来の絵画主義に基づいたピクトリアリスム（芸術写真）からの脱却を目指し、写真独自の表現を追求することを意図していました。この運動は、アメリカのアルフレッド・スティーグリッツが提唱したストレートフォトグラフィの概念にも近いものがありますが、日本独自の解釈やアプローチを持っています。

日本の具体的な写真家としては、堀野正雄、金丸重嶺、渡辺義雄、大久保好六などが名を挙げられます。新興写真は、近代美術の評価、機械美の探求、都市や社会に対する関心、さらには報道写真との密接な関係を特徴としていました。

新たな表現の模索

新興写真の表現は、単にストレートフォトグラフィの枠にとどまらず、モホリ＝ナジらの先駆者が示したさまざまな技法や、新しい視点を取り入れました。具体的には、フォトグラムやフォトモンタージュなどの技術が取り入れられ、科学写真に至るまでその範囲は広がりました。日本の中では、中山岩太、小石清、安井仲治といった写真家がこの潮流に参加し、前衛写真との関連性を持たせた作品に取り組んでいます。

名称の由来と関西の発展

「新興写真」という名称は、フォトタイムス社の木村専一が1930年に設立した「新興写真研究会」と、その活動を通じて創刊した『新興写真研究』に由来していると言われています。戦前の日本の写真界において、新興写真の影響は東京だけでなく関西地域でも広がり、特に芦屋カメラクラブがその先駆けの一つとされています。

新興写真を体現した著作物には、雑誌『光畫』（1932年 - 1933年）や、堀野正雄の写真集「カメラ・眼×鉄・構成」（1932年）が含まれています。これらの作品は、新興写真の思想やスタイルを反映し、その普及を促進した重要な役割を果たしました。

まとめ

新興写真は、日本の写真芸術において重要な変革をもたらした運動であり、国際的な影響を受けながら新しい表現の道を切り開きました。その流れは、日本の写真文化に多様性を与え、今日の写真表現にも影響を与え続けています。

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