新選組顛末記

新選組顛末記（しんせんぐみてんまつき）

『新選組顛末記』は、幕末期に活躍した新選組を知る上で重要な史料の一つとされています。これは、新選組隊士として数々の激戦を潜り抜けた永倉新八が、晩年に自らの体験を語った回想録を基にしています。

成立と出版の経緯

この回想録は、永倉が北海道小樽に移住していた大正2年（1913年）に、当時の地元紙である『小樽新聞』に「新撰組 永倉新八」という表題で連載されたものです。連載期間は同年3月17日から6月11日まででした。この回想を筆録したのは、同新聞社の記者であった吉島力です。吉島は永倉から直接聞き書きし、記事としてまとめたと考えられています。

連載終了後、永倉新八の長男である杉村義太郎氏が、父の十三回忌にあたる大正12年（1923年）頃、この新聞連載記事に加筆・修正を施し、『新撰組永倉新八』として編集・発行しました。この書籍が後に改題され、『新選組顛末記』として広く知られるようになりました。

内容と史料としての性格

本書には、永倉が経験した新選組時代の様々な出来事に関する証言が収められています。入隊から主要な戦い、隊内の人間関係や事件に至るまで、永倉自身の視点から語られています。さらに、新選組を脱退した後に永倉が旧幕臣らと結成した部隊、靖兵隊での活動についても言及されており、彼の波乱に満ちた生涯の一端を知ることができる内容となっています。

ただし、本書は永倉自身の筆によるものではなく、聞き書きという形式を取っていること、また永倉が既に晩年であったことから、記憶違いや事実誤認が含まれる可能性が指摘されています。特に、歴史研究家である尾崎秀樹氏が、新人物往来社から刊行された同書の解説において、この点への留意を促しています。そのため、他の史料や証言と照らし合わせながら利用することが歴史研究においては重要となります。

その後の展開

平成10年（1998年）10月には、新人物往来社より新たな装丁で再刊されました。この新装版には、オリジナルの『新撰組 永倉新八』の内容に加え、新選組関係者の談話や、永倉が作成したとされる隊士名簿である『同志連名記』など、関連資料が多数収録されており、資料価値がさらに高められています。これにより、研究者だけでなく、広く新選組に関心を寄せる人々にとって、よりアクセスしやすく、かつ内容の充実した史料となりました。

『新選組顛末記』は、永倉新八という新選組の重要人物の一人による直接的な証言が記録されている点で極めて貴重です。彼のような古参幹部の視点から当時の出来事を知ることは、公的な記録や他の隊士の記録にはない深みを与えてくれます。ただし、その成立経緯からくる性格を理解した上で読むことが、史実を正確に把握するために不可欠と言えるません。

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