新野親矩

新野 親矩（にいの ちかのり）

新野親矩は、戦国時代における日本の武将であり、今川氏の家臣として知られています。彼は遠江国の新野新城（舟ケ谷城）の主であり、その名は戦国時代の数々の出来事に刻まれることとなります。新野氏自体は今川氏の庶流にあたり、遠江の新野村（現在の静岡県御前崎市新野地区）に居住する家系でした。戦国時代の混乱の中、新野氏は今川氏の一員としての格式を持ち続けました。

親矩は、信濃国の武将である上田晴昌の次男として生まれ、縁あって新野親種の養子となりました。歴史の記録によると、弘治3年（1557年）2月22日付けの『言継卿記』に登場する「新野彦十郎」は、親矩の初期の名乗りではないかと考えられています。彼の人生が変わるのは、今川義元が桶狭間の戦いで戦死した後のことで、今川氏は急速に衰退の一途を辿ります。

親矩は、義元の嫡男氏真に対して非常に忠誠心を示しました。この時期、他の家臣たちが離反していく中で、親矩は変わらず氏真に仕え続けました。特に注目すべきは、永禄5年（1562年）の事件です。この年、井伊家の当主直親が小野道好の讒言により謀反の疑いをかけられ、命を落としました。氏真が直親の息子虎松の命も狙った際、親矩は氏真に直親の未亡人であるおひよと虎松の保護を嘆願し、救うことに成功しました。この出来事は、井伊氏の大きな危機を乗り越えたとして高く評価されています。

しかし、今川氏の衰退は止まることを知らず、永禄6年（1563年）以降、遠江の国人たちによる今川氏への謀反が続発します。この混乱は「遠州忩劇」として知られ、新野親矩も弟・之規とともに今川方として戦いに身を投じました。その結果、引馬城を攻めた際に命を落としたという情報があります。一方で、異なる伝承もあり、ある文献では永禄7年（1565年）に連龍の屋敷を攻めて亡くなったとされています。

親矩の死後、彼は左馬武神社に祀られました。幕末に入ると、井伊直中の十男が親矩の子孫である木俣守易の養子となり、新野氏の名跡を再興し、新野親良を名乗ることとなります。親矩には一男七女がいたとされ、その息子新五郎（甚五郎）は後に後北条氏に仕え、小田原征伐において戦死しました。また、親矩の娘の一人は北条氏家臣の狩野主膳に嫁ぎ、後に井伊氏家老の木俣守勝に再婚しています。守勝の後を継いだ守安は実子がないことから新野家を再興する道を歩むこととなります。

特徴的なのは、新野親矩に関する後世の記録です。彼は今川氏親から与えられた名であったという考えが横行していますが、実際には戦国期の新野氏の当主の名前は「氏○」で通っていたため、「親矩」の名は後世の創作とされる説も存在します。

このように、新野親矩の人生は忠誠心や義理、そして彼の行動がいかに多くの人々に影響を与えたかを示しています。彼の物語は、戦国時代の複雑な人間関係や忠誠の価値を浮き彫りにしており、後世にわたる武将のあり方についても考えさせられます。

もう一度検索