施薬院宗伯

施薬院宗伯

施薬院宗伯（やくいん そうはく）は、天正4年（1576年）に近江国で生まれ、寛文3年7月28日（1663年8月30日）に88歳で没した、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての医学者です。父は三雲資隆。

生涯

幼くして父を亡くした宗伯は、一鴎宗虎（いちおう そうこ）に養育され、医学と薬学の知識を深く学びました。後に施薬院全宗（やくいん ぜんそう）の養子となります。全宗の嫡男である秀隆が夭折したため、急遽その跡を継ぎ、施薬院家を相続することになりました。法眼（ほうげん）に叙任され、豊臣秀吉の侍医として仕えることになります。

慶長4年（1599年）に養父である全宗が亡くなると、法印（ほういん）に叙任され、勅許を得て施薬院使（やくいんづかい）に任じられました。これにより、御所への昇殿を許されるという名誉を得ます。その後、徳川家康に仕え、常にその側近くに仕え、家康からの信頼を得ました。家康の子である武田信吉（たけだ のぶよし）が疱瘡（ほうそう：天然痘）にかかった際には、宗伯が調合した薬によってたちどころに治癒したと伝えられています。慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いにも家康に供奉し、9月11日に家康の体調が優れない時には、薬を調合して献上しました。家康が岐阜に着陣してからは、常に陣中にあって家康の健康管理に尽力しました。

慶長19年（1614年）から始まる大坂の陣では、徳川秀忠（とくがわ ひでただ）に同行しました。元和3年（1617年）8月14日には、山城国愛宕郡（やましろのくに おたぎぐん）、葛野郡（かどのぐん）、和泉国泉郡（いずみのくに いずみぐん）、近江国野洲郡（おうみのくに やすぐん）において、480余石の領地を賜りました。養父の妻に与えられた野洲郡の領地と合わせると、500余石を知行することになります。寛永11年（1634年）には、二条城内に屋敷を与えられ、後に致仕し、養老料として月俸50口を賜りました。

寛文3年（1663年）に88歳で没し、法名は宗伯。墓所は東叡山護国院（とうえいざん ごこくいん）にあります。宗伯の死後も、徳川将軍家（家康、秀忠、家光）が京都に入る際には、宗伯の屋敷で装束を改め参内することが慣例となりました。これは、宗伯が禁裏付医師（きんりづきいし）として京都に定住したことによります。歴代の当主は、家督を継承する前には三雲の名字を名乗り、家督を相続すると施薬院へと名字を変えるという慣習がありました。

施薬院家

施薬院家は代々、医学をもって朝廷や幕府に仕えた家柄であり、宗伯はその中でも特に徳川家康からの信頼が厚かったことで知られています。その医学的知識と功績は、江戸時代初期の医療に大きく貢献しました。

参考文献

寛政重修諸家譜
京都府医師会 編『京都の医学史』思文閣出版社、1980年

もう一度検索