武田信吉

武田 信吉（松平 信吉）

武田信吉（たけだ のぶよし）、別名松平信吉（まつだいら のぶよし）は、江戸時代初期において活躍した大名で、徳川家康の五男にあたります。彼の出生や家系、さらに人生の軌跡について詳述します。

出自

信吉は天正11年（1583年）9月3日、浜松にて家康の五男として誕生しました。幼少時の名前は福松丸であり、彼の母は甲斐武田氏の家臣である秋山虎泰の娘、於都摩（後に下山殿とも呼ばれる）です。秋山氏は武田家の支流であり、信吉の出自はこのように複雑です。

生涯

天正10年（1582年）、信吉が生まれる前の年、織田・徳川連合軍が甲州征伐に向かい、甲斐河内の領主であった穴山信君は織田・徳川側に与します。しかし、同年6月には本能寺の変が起こり、信君は上方で横死。その後、家康に帰属したことにより、信吉は甲斐・信濃地域の武田家の名跡を継承する運命を担いました。

信君の後を継いだのは、信君の長男既に故人の勝千代（武田信治）であり、残念ながら信吉の体制も短命であったため、武田家は一時的に断絶の危機に瀕しました。信君は家康に養女を差し出し、その結果として家康の側室となり、万千代丸（信吉）を授かります。信吉は見性院の後見を受けた後、武田七郎信義となりました。

しかしながら、信吉の武田家継承時に恐れられたのは領地の喪失です。家康が駿府に拠点を移すことで、信吉の所領であった江尻領などが徳川氏に没収された可能性があるとされています。

信吉は1930年から1590年にかけて、家康の関東移封に従い、下総国小金城に移任され、そこで松平姓に復し、松平信吉と名乗ります。同族の木下勝俊の娘と結婚したのは、家康から豊臣秀吉への配慮によるもので、これによって信吉は領地の増加を許されました。

その後、1591年に母が急逝すると、見性院が信吉の養母となり、文禄2年（1593年）には下総国佐倉城を与えられます。慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは江戸城の留守居役として戦況を見守りました。

さらに、慶長7年（1602年）には佐竹氏から常陸国水戸25万石を与えられ、武田家の再興を果たしました。「武田」の名を掲げつつも、信吉は生来病弱であり、慶長8年（1603年）9月11日にわずか21歳で亡くなりました。病名は湿瘡であり、死去の際には子孫がいなかったため、武田家は再び断絶の道を歩むこととなります。

尚、信吉には女子がいた可能性が指摘されていますが、その女性がもう一人の松平信吉との混同であった可能性が高いため、この議論は未解決のままとなっています。

信吉の異母弟である頼将は水戸藩を継ぎ、さらに異母弟の頼房が後を継ぎ、水戸徳川家の基盤が築かれました。信吉の家臣も多数が水戸家に仕官することになり、彼の足跡は水戸史にも大きな影響を及ぼしました。

墓所は茨城県那珂市の常福寺に位置し、法名は浄巌院殿英誉善香崇厳です。後に、甥の徳川光圀によって瑞龍山に改葬されました。

登場する作品

武田信吉は2000年のNHK大河ドラマ『葵 徳川三代』で、俳優横堀悦夫によって描かれています。彼の生涯は、多くの小説や映像作品に触発され、江戸時代の重要な歴史的人物として記憶されています。

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