旅籠屋「清明屋」

旅籠屋「清明屋」：江戸時代の宿場町を今に伝える貴重な遺構

愛知県豊橋市二川町中町に位置する「清明屋」は、江戸時代後期から明治時代初期にかけて旅籠として営業していた建物を復元したものです。豊橋市指定有形文化財に指定されており、東海道の宿場町として栄えた二川宿の歴史を今に伝えています。

歴史：旅籠から商家へ

かつて東海道の重要な宿場町として賑わった二川宿。約30軒もの旅籠が軒を連ねていたと言われ、その多くは宿場の中心である二川中町に集中していました。清明屋は、文化14年（1817年）に倉橋家によって建てられた主屋を起源とし、江戸時代後期には旅籠として営業を開始しました。

当時、大名行列が二川宿を通過する際には、本陣に宿泊する大名家老などの上級武士が清明屋に宿泊することもあったと伝えられています。明治時代に入ると、旅籠の営業は終了し、呉服などを扱う商家へと転換。その後、戦後には薬局として利用されるなど、時代とともに変化を遂げてきました。

復原への道のり：文化財としての再生

1983年、豊橋市による二川地区の町並み調査で、清明屋が貴重な旅籠屋の遺構であることが判明しました。この発見を機に、清明屋の保存と復元に向けた動きが本格化します。2000年、豊橋市が倉橋家から建物を寄贈を受け、本格的な改修復原工事が開始されました。

2001年には豊橋市指定有形文化財に指定され、2002年から2004年にかけて、主屋、繋ぎの間、奥座敷などが江戸時代の姿に復元されました。調査の結果、主屋の建築年は文化14年（1817年）であることが判明しました。すでに取り壊されていた土蔵と裏座敷は、当時の様子を元に新築で復元されています。

一般公開と二川宿本陣資料館

2005年4月29日、二川宿本陣資料館がリニューアルオープンし、清明屋も一般公開されるようになりました。本陣と旅籠屋を同時に見学できる施設は、当時全国初でした。さらに2015年11月には、商家「駒屋」が開館。これにより、二川宿は本陣、旅籠屋、商家の建物を全て見学できる、全国唯一の宿場町となりました。2023年3月16日には、豊橋市景観重要建造物にも指定されています。

清明屋の施設

清明屋は、当時の旅籠の構造をそのままに復元されています。ミセの間、小ミセ、台所、奥の間、繋ぎ次の間、繋ぎの間、奥次の間、奥座敷、ミセニワ、ウチニワなど、当時の様子を伺い知ることができる様々な空間が残されています。西隣には二川宿本陣があり、清明屋とともに豊橋市二川宿本陣資料館の展示施設として公開されています。これらの施設を見学することで、江戸時代の宿場町の暮らしを深く理解することができるでしょう。

全国唯一の貴重な宿場町

二川宿本陣資料館は、本陣、旅籠屋「清明屋」、商家「駒屋」の3施設から構成され、江戸時代の宿場町の姿をリアルに体感できる貴重な場所です。これらの建物を見学することで、当時の生活の様子、人々の交流、そして宿場町の賑わいを想像することができます。歴史を肌で感じられる、全国でも稀有な観光地として、多くの人々に愛されています。

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