景観重要建造物

景観重要建造物：歴史的建造物を守る制度

2004年施行の景観法に基づき、地方自治体（景観行政団体）が指定する建造物が「景観重要建造物」です。歴史的景観の保全と継承において重要な役割を担う制度であり、指定を受けることで様々な優遇措置が受けられます。

指定による影響

景観重要建造物に指定されると、以下の様な影響があります。

1. 建築基準法の緩和・適用除外: 建築基準法の規制の一部が適用除外または緩和される場合があります。これは、歴史的建造物の改修や維持管理を容易にするためです。具体的な内容は自治体によって異なります。

2. 相続税の軽減: 民間所有の建造物が景観重要建造物に指定されると、相続時の評価において適正な評価が行われ、相続税の控除を受けることが期待できます。これは、所有者の経済的な負担を軽減し、建造物の維持を促進する効果があります。

3. 管理協定の締結: 景観行政団体が指定する景観整備機構と管理協定を締結することが求められる場合があります。これは、建造物の適切な維持管理を確保するためです。

4. 現状変更の許可: 建造物の現状を変更する場合、景観行政団体の長の許可が必要となります。これは、景観の保全を図るため、改修工事などについても制限が設けられることを意味します。

5. 築年数制限の非存在: 登録有形文化財の指定には築後50年という条件がありますが、景観重要建造物には築年数の規定はありません。ただし、多くの自治体では指定基準に「歴史的価値がある建造物」といった条件を設けており、実際には歴史的建造物が多く指定されています。

指定状況と効果

2011年時点のデータでは、指定されている景観重要建造物は91件。そのうち83件が戦前に建築された建造物であり、民間所有は65件、個人所有は50件にのぼります。このことから、景観重要建造物への指定は、特に戦前に建築された歴史的建造物、そして民間や個人が所有する建造物の維持管理に大きな影響を与えていることが分かります。

経済的な側面では、相続税の軽減は所有者の負担を減らし、建造物の保存を促進します。また、指定によって建造物の価値が高まることで、維持管理のための資金調達も容易になる可能性があります。

各地の指定状況

景観重要建造物は全国各地で指定されており、鎌倉市や川越市などでも独自の指定制度があります。これらの地域では、それぞれの地域特性を考慮した景観の保全が積極的に行われています。

まとめ

景観重要建造物制度は、歴史的建造物の保全と、それらを取り巻く景観の維持に重要な役割を果たしています。相続税対策や維持管理の容易さといった経済的メリットに加え、歴史的・文化的資産の継承という観点からも、この制度の意義は非常に大きいと言えるでしょう。今後、更なる活用と発展が期待されます。

もう一度検索