日乃出会館

日乃出会館は、宮城県仙台市青葉区中央1丁目に位置していた、複合商業施設「日乃出興業ビル」の通称です。このビルは、映画館を中心に様々な施設を備え、仙台市民の娯楽の中心地として長年親しまれてきました。

開業と初期の様子

1957年（昭和32年）4月14日、竹中工務店が構造設計を担当した地上8階・地下1階のビルとして開業しました。当時、1階と2階には洋画ロードショー館である日乃出劇場、5階には日乃出5階劇場、そして地下1階には名画座の日乃出地下劇場とニュース映画専門館の日乃出ニュース劇場がありました。さらに、7階には展示会などに利用される大ホール、屋上にはローラースケート場が設けられ、多岐にわたる娯楽を提供していました。この日乃出会館のオープンにより、仙台市内の映画館は一気に増加し、同館内の4スクリーンを含めて24館となりました。

変遷と映画館の移り変わり

1970年代以降、時代に合わせて館内の改装が行われました。1階にはパチンコ店が入り、地下1階の2つの映画館は日乃出劇場とシネマ仙台へと変わりました。3階はボウリング場から日乃出スカラ座に、4階は日乃出プラザ劇場に生まれ変わりました。映画館の運営は、当初は日乃出興業株式会社が行っていましたが、後に東京都新宿区で「新宿スカラ」などを運営していた三和興行株式会社に移管されました。三和興行は、近隣の仙台東宝劇場と共に、東北地方における東宝系列のチェーンマスターとして重要な役割を担っていました。

閉館とその後

2000年（平成12年）以降、仙台市内にシネマコンプレックスが次々と開業した影響で、日乃出会館の業績は徐々に低下していきました。そして2002年（平成14年）9月17日、45年の歴史に幕を閉じ、全館閉館となりました。閉館後、ビルはパチンコホール「ベガスベガス」などを運営する山形市の大成商事（当時）に売却され、「大成商事GSビル」と名前を変えました。さらに2008年4月17日には、オリックス不動産に売却され、「GSビル」として再スタートを切りました。しかし、建物の老朽化と耐震性の問題から、2017年3月17日にはテナントに対して退去が求められ、2018年6月から解体工事が開始され、2019年秋に解体が完了しました。

映画館の変遷

閉館時の映画館の名称と座席数は以下の通りです。

日乃出劇場
日乃出プラザ劇場
日乃出スカラ座
シネマ仙台

関連施設

日乃出会館の歴史を語る上で、関連する施設もいくつか存在します。

日乃出セントラル劇場: 同じ日乃出興業が運営していた映画館で、後に仙台教映社、さらに合同会社仙台セントラル劇場へと経営権が移りました。ミニシアターとして「仙台セントラル劇場」、「桜井薬局セントラルホール」と名称を変えながら存続しましたが、2018年に閉館しました。
仙台シネアート1・2: 三和興行が運営していた映画館で、三和興行撤退後はフォーラム運営委員会が引き継ぎ、「チネ・ラヴィータ」として存続しましたが、再開発のため現在は移転しています。
* 仙台ホテル: 日乃出会館に隣接していたホテルで、かつて仙台市内に存在しました。

日乃出会館は、仙台市民にとって映画文化の中心地であり、多くの思い出が詰まった場所でした。その歴史は、仙台の映画史の一部として、今も語り継がれています。

もう一度検索