日吉台地下壕

日吉台地下壕とは

日吉台地下壕は、第二次世界大戦（太平洋戦争）中に大日本帝国海軍が神奈川県横浜市港北区日吉の慶應義塾大学日吉キャンパス地下などに建設した防空壕です。この地下壕は、日吉台遺跡群の一部として位置づけられています。戦時中、連合艦隊司令部や海軍省の主要な部署が置かれ、重要な地下要塞として機能していました。

地理的背景と建設の経緯

現在、慶應義塾大学日吉キャンパスや東横線日吉駅がある地域は、標高35～40メートルの日吉台という台地にあります。日吉台地下壕は、戦争末期に空襲を避けて指揮を執るため、台地の斜面にトンネルを掘って建設されました。コンクリート製の地下要塞で、1944年（昭和19年）から海軍機関の移転が始まりました。

当初、海軍は慶應義塾大学の校舎や寄宿舎、疎開した国民学校などを利用していました。その後、慶應寄宿舎の地下に連合艦隊司令部用の壕が掘られ、他の機関を収容するための壕が次々と増設されました。具体的には、連合艦隊司令部、海軍航空本部、海軍省人事局、軍令部第三部などが日吉キャンパス地下に設けられました。また、艦政本部は日吉キャンパス西方の台地地下に建設されました。これらの大規模な5つの地下壕以外にも、矢上キャンパス地下の運輸省航空試験所地下壕など、多数の小規模な地下壕が確認されています。

慶應義塾大学文学部民族学考古学研究室は、これらの地下壕群を「日吉キャンパス一帯の戦争遺跡群」と呼び、広義の「日吉台遺跡群」の一部としています。

現在の状況

敗戦後、地下壕はそのまま残され、慶應義塾大学の敷地内の一部は『日吉台地下壕保存の会』が大学の許可を得て定期的に見学会を実施しています。しかし、民有地にかかる部分では、2013年に宅地造成によって東側の入口が破壊されるなど、失われた箇所もあります。

現在、「横浜市行政地図情報提供システム」で地下施設の位置が示され、考古学的な遺跡として扱われています。そのため、破壊行為は文化財保護法や横浜市文化財保護条例に違反する行為となります。

2015年には、神奈川県立歴史博物館で「特別展 陸にあがった海軍—連合艦隊司令部日吉地下壕からみた太平洋戦争—」が開催され、この地下壕の歴史が紹介されました。

関連情報

日吉台地下壕は、松代大本営跡や野島掩体壕など、他の戦争遺跡とも関連付けられます。また、タチソという秘密兵器の開発に関連する施設も存在していました。

日吉台地下壕の歴史や現状については、以下の参考文献や関連団体によって詳しく知ることができます。

連合艦隊日吉台地下壕の保存をすすめる会『フィールドワーク日吉・帝国海軍大地下壕 学び・調べ・考えよう』
安藤, 広道、千葉, 毅「日吉台旧帝国海軍大規模地下壕群の構築過程と設営集団」
神奈川県立歴史博物館編『特別展 陸にあがった海軍—連合艦隊司令部日吉地下壕からみた太平洋戦争—展示図録』
加藤, 三明、山内, 慶太、大澤, 輝嘉『慶應義塾 歴史散歩 キャンパス編』
安藤, 広道「第2章 日吉台遺跡群について」『日吉台遺跡群発掘調査報告書-2006～2014年度の調査成果-』
千葉, 毅「横浜市港北区日吉一帯における戦争遺跡をめぐる活動のあゆみと現状」

外部リンク

日吉台地下壕保存の会
三田評論 第56回 日吉台地下壕
* 『慶應義塾豆百科』 No.89 日吉台の地下壕

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