日映 (1984年設立)

日映（にちえい）

日映は、かつて存在した日本の貿易会社、映画製作会社です。1984年10月に日映エージェンシーとして設立され、1992年4月に日映へと社名を変更しました。事業内容は多岐にわたり、映画やOVAの製作を手掛ける映像事業と、香港の電機メーカーへ東芝の電子部品を輸出する貿易事業、そしてジェットバスなどの浴槽やサウナの販売施工を行うアメニティ事業を、ほぼ同等の規模で展開していました。1991年の年商は24億円、従業員数は30人でした。また、マクザムを通じてファミコンのゲームソフトの販売も行っていました。

歴史

日映の創業者である中村季靖は、日本大学理工学部出身で、大学時代に極真空手に入門しました。大学卒業後は特殊金属工業の技術研究所に就職しましたが、1976年に映画『愛と誠・完結篇』のオーディションに合格し、端役として出演。この際、空手を通じて知り合いだった梶原一騎から「サラリーマン向きではない」と言われ、梶原プロに転職しました。俳優や池上季実子のマネージャーなどを務めた後、1984年に『愛と誠』のプロデューサーだった瀬島光雄から、小泉今日子主演映画『生徒諸君!』の製作を依頼され、全国オーディションを担当しました。

その後、瀬島から香港映画『酔拳』の監督、ユエン・ウーピンが次作で空手の達者を求めていると聞き、中村は香港へ渡ります。映画は実現しませんでしたが、香港での活動を通じて、ジャッキー・チェン主演作の日本でのビデオ販売権を獲得。これを機に、1984年10月に資本金4000万円で日映エージェンシーを設立しました。日映は、香港映画のビデオ権を扱った最初の会社の一つであり、当初は東映ビデオに権利を販売していましたが、レンタルビデオ市場の急成長に伴い、売上を大きく伸ばしました。特に、チョウ・ユンファが日本で全く知られていなかった頃から、彼の出演作のほとんどを押さえていたため、1987年に『男たちの挽歌』が日本で公開されると、チョウ・ユンファの人気が急上昇し、日映は大きな利益を得ました。

しかし、競合他社の参入により収益が減少したため、日映は安定した売れ行きを見せていたオリジナルアニメーションの製作に乗り出します。梶原一騎との関係から、出版関係に強固なルートを持っていたことが、ビデオ専用のアニメ化に適した劇画原作を押さえる上で有利に働きました。1989年には、『週刊漫画TIMES』（芳文社）に連載されていた『独身アパートどくだみ荘』をオリジナルアニメとして発表。その後、『ぶっちぎり』、『はいすくーる仁義』、『青春夫婦物語 恋子の毎日』、『男樹』、『押忍!!空手部』など、数々のOVAを制作しました。

1990年代に入ると、OVA市場の過当競争が激化し、売上が減少。また、映画製作への熱い想いから、日映は映画製作にも参入し、東映が関わる映画に共同出資するようになりました。『ゴールドラッシュ』、『JINGI 仁義』、『ヒルコ／妖怪ハンター』、『風、スローダウン』、Vシネマ『わたしだけの愛し方』、『プロゴルファー織部金次郎』などの作品を共同で製作しました。特に『プロゴルファー織部金次郎』は、中村が東映に企画を持ち込んだものでした。

日映のその後の活動については、詳細は不明です。

まとめ

日映は、香港映画のビデオ販売からスタートし、オリジナルアニメ制作、そして映画製作へと事業を拡大していった企業です。時代の変化に合わせて柔軟に事業を展開し、一時は大きな成功を収めました。しかし、市場の変化や競争の激化により、その後の活動は不明となっています。

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