日本エアシステム451便着陸失敗事故

日本エアシステム451便着陸失敗事故の概要

1993年4月18日、花巻空港で発生した日本エアシステム451便（以下「JAS451便」）の着陸失敗事故は、航空安全における重要な教訓を残しました。この事故は、強風という悪条件下での着陸進入中にウインドシアに遭遇し、ハードランディングを引き起こした結果、機体が炎上するという深刻な事態を招きました。幸いにも、乗員乗客の迅速な脱出により死者は出ませんでしたが、多数の負傷者を出す惨事となりました。

事故当日のJAS451便

事故を起こした機体は、マクドネル・ダグラスDC-9-41型機（機体記号: JA8448）で、1978年に製造され、当時国内ローカル路線で運用されていました。事故当日、JA8448は新千歳空港を出発し、花巻空港を経由して名古屋空港に向かう予定でした。しかし、名古屋から花巻に戻るJAS451便として運航中に事故が発生しました。この便は、さらに花巻から新千歳に戻る予定でした。

事故の経緯

JAS451便は11時47分に名古屋空港を離陸しましたが、操縦は経験の浅い副操縦士が行っていました。社内規定では、副操縦士は離着陸の操縦が禁止されており、機長が同乗していても、路線教官、飛行教官、査察操縦士の資格がない場合は操縦を任せるべきではありませんでした。しかし、当該機の機長にはこれらの資格がなく、規定違反の状態での操縦でした。この日は前日に続き、副操縦士が操縦する2回目のフライトでした。最初の花巻空港への着陸は機長が行っていました。

事故当日の花巻空港周辺は強風注意報が発令されるほどの悪天候でした。JAS451便が着陸を試みた際、空港では平均風速11メートル、最大瞬間風速22メートルの西風が吹いており、着陸機にとっては強い追い風寄りの横風でした。日本エアシステムの規定では、DC-9-41型機は平均風速13.5メートル以上、最大20.5メートル以上の横風がある場合は着陸を避けるべきとされていましたが、最終判断は機長の裁量に委ねられていました。

着陸進入中、JAS451便は機体を左右に揺らしながら降下していました。対地接近警報装置（GPWS）が「Sink Rate!（降下率注意）」と警告を発する中、12時44分、機体はウインドシアの影響で通常の着地点よりも手前にハードランディングしました。滑走路に右主翼が接地し、機体は蛇行しながら停止。この衝撃で機体は大きな損傷を受け、右主翼下から出火しました。

乗客による映像記録

この事故の際、ある乗客が着陸直前から炎上、脱出に至る一部始終をホームビデオで記録していました。この映像には、着陸前の機体の激しい揺れに恐怖を感じる乗客の叫び声や、炎に照らされた機内で混乱する様子、そして緊急脱出時の混乱した状況が映し出されています。乗客は客室乗務員の指示に従い緊急脱出を試みましたが、混乱は収まらず、脱出指示から脱出完了まで86秒を要しました。幸いなことに火災による死傷者はいませんでした。

事故による被害

この事故により、乗員5名乗客72名のうち、乗員1名と乗客2名が重傷を負い、乗員4名と乗客51名が軽傷を負いました。花巻空港は事故の影響で閉鎖され、3日後の4月21日夕方に再開しました。

事故原因

事故調査報告書によると、事故原因は、風向風速が大きく変動する中でウインドシアに対する十分な準備がないまま着陸動作を行い、その最中にウインドシアに襲われたことによるハードランディングであると結論付けられました。この事故は、パイロットの判断ミスと、ウインドシアという予測困難な気象現象に対する備えの不足が複合的に影響した結果と言えるでしょう。

教訓

この事故は、航空機の安全運航において、パイロットの判断力、気象状況の正確な把握、そして緊急事態への適切な対応の重要性を示しています。また、航空会社には、運航規定の厳守と乗務員の教育徹底が求められることを改めて認識させる出来事となりました。

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