日本キックボクシング協会

日本キックボクシング協会

日本キックボクシング協会（にほんキックボクシングきょうかい）は、日本の格闘技であるキックボクシングの創成期において、中心的な役割を担ったプロモーション団体です。

この協会は、キックボクシングという競技そのものを創り出した野口修氏によって、1966年に産声を上げました。設立されたその年の4月11日には、大阪府立体育館において、記念すべき第1回公式興行が開催されています。これは、日本のプロキックボクシングの歴史における、極めて重要な一歩となりました。

協会は設立から約10年間にわたり、日本のキックボクシング界を牽引する存在として隆盛を極めました。具体的には、1966年（昭和41年）頃から1977年（昭和52年）頃にかけての時期、全日本キックボクシング協会と並び称される主要団体として、絶大な人気を集めました。

協会の人気を不動のものとした最大の立役者の一人が、当時、剛柔流空手で並外れた活躍を見せていた沢村忠選手です。野口修氏は、沢村選手を団体の看板選手、すなわち不動のエースとしてリングに送り出しました。沢村選手の活躍は、多くのファンを魅了し、キックボクシングへの注目度を一気に高めることとなります。

さらに、このブームを後押ししたのが、TBS系列で定期的に放送されていたテレビ番組『YKKアワー キックボクシング中継』です。この番組を通じて、沢村忠選手をはじめとする協会の選手たちの激しい戦いが全国のお茶の間に届けられ、キックボクシングは一種の社会現象とも呼べる一大ブームを巻き起こしました。

しかし、時代の流れとともに、この熱狂にも翳りが見え始めます。ブームを牽引したエース、沢村忠選手が1976年に現役を引退したことは、協会にとって大きな転換点となりました。そして、1980年頃（昭和55年頃）には、長らく親しまれたテレビ中継が終了。主要なメディア露出の機会を失ったことで、キックボクシング全体の人気は急速に下降線を辿ることになります。

主要選手やテレビ放送という、人気を支えた二つの柱を失った協会の勢いは衰え、組織内部では様々な意見の対立や運営上の問題が生じ始めました。その結果、多くの分派を生み出し、団体の分裂が相次ぐという事態に陥りました。かつて日本のキックボクシング界を牽引した組織は、その統一性を失い、事実上活動を停止するに至ったのです。

しかし、創設者である野口修氏が提唱したキックボクシングの理念や精神は、完全に途絶えたわけではありません。1983年からは、新日本キックボクシング協会が後継団体としての役割を担い、「野口イズム」と呼ばれるその哲学と伝統を受け継いで、日本のキックボクシング界の一翼を担っています。

日本キックボクシング協会は、短期間ではありましたが、日本のプロ格闘技史において、キックボクシングという新たなジャンルを確立し、国民的な人気を獲得するという、計り知れない功績を残しました。その歴史は、現在の日本のキックボクシング界に大きな影響を与え続けています。

（脚注は省略）

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