日本ビデオ倫理協会

日本ビデオ倫理協会（ビデ倫）とは

日本ビデオ倫理協会（通称: ビデ倫、英: Nihon Ethics of Video Association、略してNEVA）は、かつて存在したアダルトビデオ制作会社による会員制の自主審査組織です。法人格を持たない任意団体として、アダルトビデオ業界における自主規制の役割を担っていました。

発足の背景と変遷

摘発増加と自主規制の始まり

1960年代後半から業務用ビデオが普及し、性表現を取り入れたビデオ作品が制作されるようになりました。1970年代初頭には警察による摘発が相次ぎ、これを受けて1972年2月、東映ビデオ、日活、日本ビコッテの3社が中心となり、映倫管理委員会（映倫）の審査基準を準用した「成人ビデオ倫理自主規制懇談会」が発足しました。

日本ビデオ倫理協会への改称と拡大

1975年から1976年にかけて、ベータマックス・VHS方式のビデオが相次いで発売され、家庭用ビデオ市場が急拡大しました。これに伴い、1977年1月に名称を「日本ビデオ倫理協会」と変更し、定款や規約、審査体制を整備して、他のメーカーにも広く門戸を開放しました。

1982年末にビデオレンタルシステムが確立すると、無審査メーカーに対する摘発が相次ぎました。これにより、レンタルビデオ業界ではビデ倫加盟メーカー以外のアダルトビデオを取り扱わない傾向が強まり、加盟メーカーが急増しました。

迷走と業界再編

ヘア解禁問題とインディーズの台頭

1990年代前半、写真集や週刊誌でヘアヌードが解禁されると、加盟各社から陰毛規制の緩和を求める声が上がりました。しかし、ビデ倫はこれに反対し、結果としてインディーズメーカーの台頭を許してしまいます。審査基準の異なる自主規制団体が複数存在する事態となり、その後の業界再編に大きな影響を与えました。

摘発事件と審査業務の終了

2007年8月23日、アダルトDVDの審査が不十分であるとして、警視庁保安課による家宅捜索を受け、資料が押収されました。モザイク処理の甘いDVDの販売を幇助した容疑によるもので、ビデ倫にとって初の警察による強制捜査となりました。2008年3月1日には、ビデ倫の審査部統括部長とビデオ制作会社社長がわいせつ図画頒布幇助の容疑で逮捕されました。

この事件の影響で、2008年6月をもって作品の審査業務を終了し、過去に審査した作品の管理に専念することになりました。

日本映像倫理審査機構（日映審）への移行と解散

2008年6月25日、ビデ倫加盟メーカーが新たに設立した「日本映像倫理審査機構」（日映審）が、同年7月より審査業務を開始しました。日映審はその後、2010年12月にコンテンツ・ソフト協同組合（CSA）の内部組織であるメディア倫理委員会（メディ倫）と合流し、新組織「映像倫理機構」（映像倫）となりました。これにより、ビデ倫は一切の組織と業務を映像倫に譲渡し、解散しました。

ビデ倫の活動と課題

公権力との関係

発足以来、ビデ倫は審査組織を拡充し、学識経験者による評議員会を設けたり、警察庁出身者を事務局に採用したりするなどして、アダルトビデオ業界に対する公権力の介入を最小限に抑える役割を果たしました。しかし、このことが「警察庁関係者の主要な天下り先となっているのではないか」という指摘を生むことにもなりました。

海賊版対策と業界内の不満

ビデ倫は、関連団体としてビデオ倫理監視委員会を設け、海賊版の排除を目的とした活動を行っていました。しかし、ビデ倫の運営が旧来のメーカー主体であることや、作品の審査基準が不明確で時代に適合していないなどの不満が業界内に根強く存在し、1980年代後半から別の自主審査組織を設立する動きがいくつかありました。

審査基準の緩和と存在感の低下

2005年には、レンタル市場でもインディーズ系メーカーが優位に立つようになり、ビデ倫でも遅ればせながら、局部に沿ったモザイク処理やヘア・アナルの露出を解禁するなど、基準の見直しが行われました。しかし、その後も別の審査団体を設立する動きが相次ぎ、ビデ倫の存在感は年々低下していきました。

現在の状況

ビデ倫は解散しましたが、その役割は映像倫理機構（映像倫）に引き継がれています。アダルトビデオ業界の自主規制は、時代とともに変化し続けており、映像倫がその一翼を担っています。

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