日本列島三度笠

『日本列島三度笠』（にほんれっとうさんどがさ）は、日本の歌手である橋幸夫が1985年7月5日にリリースしたオリジナルアルバムです。この作品は、LPレコード（製品番号：30RL-0002）とカセットテープ（製品番号：30RM-0002）の二種類のメディアで提供されました。

本アルバムは、橋幸夫が芸能活動を開始してから25周年を迎えたことを記念して企画された、一連のオリジナルアルバムリリースのうち、第二弾にあたる作品です。リバスター音産から発売された、彼のキャリアにおける重要な節目を飾る記念プロジェクトの一環として位置づけられています。

作品の核となるコンセプトは、タイトルが象徴するように、三度笠をかぶった旅人が日本列島を縦断する旅を描くことにあります。収録曲は、北から南へと地理的な順序に沿って配置されており、それぞれの楽曲が特定の地域を舞台にした股旅演歌で構成されています。この構成によって、聴き手はまるで音楽の旅をしているかのような感覚を味わうことができます。歌には、各地の風情と共に、股旅の世界ならではの痛快な仁義や人間ドラマが情感豊かに綴られています。

本作の制作には、歌謡界の第一線で活躍する著名な音楽家たちが多数参加しています。作詞は、数多くのヒット曲、特に股旅歌謡の分野で知られる星野哲郎が全曲を手掛けました。彼の紡ぎ出す言葉が、アルバム全体の物語性を深くしています。作曲においては、日本を代表する12名もの作曲家が各楽曲を担当するという、極めて豪華な顔ぶれによる競作が実現しました。参加した作曲家は、浜圭介、鈴木淳、森田公一、弦哲也、遠藤実、猪俣公章、岡千秋、平尾昌晃、市川昭介、吉田正、三木たかし、小林亜星といった巨匠たちであり、それぞれの個性が楽曲に多様な彩りを加えています。編曲は、全曲を通じて斉藤恒夫が一手に担い、アルバム全体のサウンドに統一感と安定感を与えています。

収録されている全12曲は、旅の行程に沿ってA面とB面に分かれています。A面には北海道から中部地方にかけての楽曲が、B面には近畿地方以南の楽曲が収められており、日本列島を音楽で巡る旅が表現されています。収録曲名とそれぞれの舞台地域、作曲家は以下の通りです。

A面

北海の三度笠 〈北海道〉 作曲：浜圭介
奥州鴉 〈岩手・宮城〉 作曲：鈴木淳
磐梯仁義 〈福島〉 作曲：森田公一
咲太郎笠 〈茨城〉 作曲：弦哲也
かるかや仁義 〈新潟・長野〉 作曲：遠藤実
中仙道ひとり笠 〈長野・岐阜〉 作曲：猪俣公章

B面

浪花残侠譜 〈大阪〉 作曲：岡千秋
こんぴら渡り鳥 〈香川〉 作曲：平尾昌晃
流れ川仁義 〈広島〉 作曲：市川昭介
三年寝太郎 〈山口〉 作曲：吉田正
葉隠夫婦笠 〈佐賀〉 作曲：三木たかし
日向の放れ駒 〈宮崎〉 作曲：小林亜星

このアルバムは、その高い音楽性と企画性から、参加した作曲家の一人である平尾昌晃に「歌謡史上不滅の名作」と評されるなど、関係者からも高い評価を得ています。発売当時の特典として、購入者にはミニ写真集が付属したほか、参加作曲家とのツーショット写真や、各氏からのコメントが記された特別なシートが同梱され、記念盤にふさわしい豪華な仕様となっていました。

『日本列島三度笠』は、橋幸夫の25周年記念オリジナルアルバムシリーズ全3作の中核をなす作品です。シリーズ第一作は「歌・そして絆」（1985年3月21日発売）、第三作は「人生祝いうた」（1985年11月5日発売）であり、本アルバムは特に彼の得意とする股旅演歌というジャンルに焦点を当て、特定のテーマ性を追求した意欲的な作品として、シリーズの中でも独自の光を放っています。橋幸夫のキャリアにおける股旅歌謡の重要性を示すと共に、日本の歌謡界における稀有な共同作業が生んだ、記憶に残る一枚と言えるでしょう。

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