日本国際放送

株式会社日本国際放送（JIB）

株式会社日本国際放送、略称JIB（Japan International Broadcasting Inc.）は、日本の公共放送を担う日本放送協会（NHK）の子会社として設立された企業です。その主たる目的は、テレビ放送を通じて日本に関する情報を世界に向けて発信し、日本の国際的な情報力を高めることにあります。

設立の背景と経緯

JIBの設立は、2000年代半ばにおける日本政府の政策意図に深く関わっています。当時の総務省の諮問機関がまとめた報告書において、国際社会における日本のプレゼンスを高めるため、テレビによる国際放送のいっそうの充実が提言されました。この政府方針を受け、2007年には放送法が改正され、NHKが国際放送を強化するための法的な枠組みが整えられました。こうした流れを踏まえ、2008年4月にNHKが全額出資する形で設立されたのがJIBです。

会社設立後、JIBは2008年9月から限定的ながら業務を開始しました。そして、2009年2月2日からは、NHKが放送する英語主体のテレビ国際放送「NHKワールドTV」に関する主要な業務を受託し、本格的な事業活動に入りました。当初はNHK単独の出資でしたが、その後、資本基盤の強化を図るため第三者割当増資を実施。これには、在京の民放キー局である日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、フジテレビジョンをはじめ、ウェブでの同時配信にも関わるマイクロソフトなど、合計13の民間企業が応じました。これは、設立に向けた検討プロセスに民放各社の幹部が関与していた背景などもあり、官民連携の形が取られたものと考えられます。ただし、在京キー局のうちテレビ東京は、番組内容の大部分がNHKの再放送であることなどを理由に、資本参加を見送る判断をしています。一方で、番組提供などの形での協力の可能性については示唆していました。

経営状況

JIBの事業開始は、世界的な景気低迷や広告市場の低迷といった、決して恵まれた環境下ではありませんでした。しかし、設立から2期目となる2009年度決算では、当初見込まれていた赤字額を大きく圧縮する結果となりました。さらに、3期目にあたる2010年度（平成23年3月期）には単年度黒字を達成し、比較的早い段階で経営を安定化させ、累積していた損失も縮小させています。

国際放送の歴史とJIBの役割

日本のテレビ国際放送の構想自体は、JIB設立よりもはるかに古い歴史を持ちます。1990年には、当時のNHK会長が世界の主要放送機関との連携による24時間ニュースネットワーク構想（グローバルニュースネットワーク：GNN）を提唱したことが知られています。この壮大な構想は実現に至りませんでしたが、その後NHKは、全世界向けのNHKワールドTV、アメリカ向けのテレビジャパン、ヨーロッパ向けのJapan Satellite TVといった形で国際放送を展開していきました。JIBは設立後、これらの国際放送業務を段階的に引き継ぎ、2010年4月1日からは、在外邦人向けのテレビ国際放送サービスである「NHKワールド・プレミアム」に関する業務も、それまで担当していたNHKグローバルメディアサービスから譲渡される形で受託し、国内外に向けた幅広い国際放送事業を担うことになりました。

その後の展開と民放との連携

JIBの設立後も、日本の海外への情報発信力が十分かという議論は続きました。2014年には、さらなる強化を目指す検討会が立ち上げられ、翌年にはNHKワールドTVを「完全なニュースチャンネル」とする方向性が提言されるなどの議論が行われました。しかし、実際の番組編成においては、ニュース以外の、民放キー局が制作に協力する音楽や情報番組などが増加する傾向も見られます。

また、JIBは民放との連携も進めています。特に、テレビ朝日が中心となり、民放系列の枠を超えた活動を行う民間放送教育協会（民教協）に賛助会員として加盟しました。これにより、2018年以降、民教協に加盟する各局が制作した番組の一部がNHKワールドTVで放送されるなど、より多様なコンテンツを世界に向けて発信する取り組みが行われています。

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